NHKやテレビ東京、日経産業新聞などで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。
誰もやりたがらないことに「値打ち」がある
私は、マレーシアで営業マンとしてキャリアを始めました。
月間約5000kmを移動して、マレーシア国内の繊維工場を営業して回る。しかも、365日ほぼ休みなく……。まさに、「下積み」生活。はっきり言って“どぶ板営業”です。しかも、その苦労を背負っても、成功が確約されているわけではありません。こんな「下積み」生活は、いまどき流行らないでしょう。
ほとんどの人が、陽の当たる仕事をしたがる。料理をつくるのは好きでも、皿を洗うのは嫌いという人が多いのと同じかもしれない。誰だって、みんなに注目されたいし、楽もしたいですからね。
でも、だからこそチャンスがある。誰もやりたがらない、つまりライバルが少ないからこそ「下積み」には値打ちがある。いきなり陽の当たる場所をめざすよりも、「下積み」をするほうがよほど成功に近づくことができるのです。当時、私はすでにそれを知っていましたから、どんな「下積み」も苦ではありませんでした。
「下積み」の大切さを知ったのは大学生のときです。
私は、大学ではあまり勉強はしなかったから、成績はよくありませんでした。留年しないギリギリの“超低空飛行”を続けていたのです。ところが、3年生のときに、学内でも最も人気のある研究室の教授から「小西君、僕の研究室に来たまえ」と声をかけられました。その研究室を出たら、超一流の製薬会社への入社が約束されますから、志望者が非常に多い“狭き門”。にもかかわらず、なぜ、私のような学生に声がかけられるのか不思議でなりませんでした。
それを察したのでしょう。教授は笑いながらこう言いました。「小西な、僕は君をバカだとは思ってない」。「当然だ。私はバカではない。成績が悪いだけだ」などと思いながら、「なぜ、私なんですか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「これからは研究者も身体を鍛えた人間じゃないとダメなんだ」
実は、この教授は、私が写真部以外にもうひとつ属していた柔道部の顧問でした。私が日々体を鍛えているのを知っているだけではなく、私が先輩にイジメかと思うくらい投げ飛ばされても、何度も立ち上がって向かっていく姿もみていたのです。だから、「なるほど、研究の下働きをさせようというわけだな」とピンと来ました。とはいえ、願ってもない「いい話」ですから、その場で快諾しました。