日本で100万人近くいるといわれている痛風患者に朗報である。
5月17日、帝人の医薬医療事業のグループ会社である帝人ファーマが、世界で約40年ぶりとなる痛風・高尿酸血症の新しい治療剤「フェブリク錠」(一般名:フェブキソスタット)を発売した。
特徴は大きく二つある。そもそも痛風は、血清中の尿酸値が高くなる高尿酸血症によって引き起こされる。この新薬は従来薬と比べて着実に尿酸値を低下させ、痛風をなくす高い有効性が臨床試験で証明されている。
もう一つの特徴は薬の適応症として、痛風だけでなく高尿酸血症も含めて承認を取得していることだ。従来薬は、適応症が痛風と、高尿酸血症を伴う高血圧症となっており、高尿酸血症でも、痛風を発症していない患者や、高血圧の合併症がない患者には処方することができなかった。
今回、尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症患者への処方が可能となり、潜在患者数は最大で1600万人まで広がる。まさに画期的な新薬なのだ。
現時点で日本国内の痛風治療薬は年間250億円前後の市場規模だが、帝人では「まず2~3年内に100億円、特許が切れる2018年までには200億円の販売を目指す」(荒尾健太郎・帝人ファーマ社長)と寄せる期待は大きい。09年以降、すでに北米や欧州7ヵ国で販売を開始しており、14年までに中国やアジア、ロシアや中東諸国など全世界60ヵ国で展開する計画で、最大年間1600億円(薬価ベース)の売上高を見込む。
11年3月期の帝人の医薬医療事業の売上高は1364億円で全体の17%を、営業利益は229億円で同39%を占めており、競争激化で利幅が薄い繊維事業に代わる帝人の収益の柱となっている。
新薬は自社開発のため利益率はさらに高くなる。医薬医療事業部門出身の大八木成男・帝人社長が、手塩にかけ育ててきた「孝行息子」が屋台骨を支える日は、そう遠くはないだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)