防衛白書によれば、日本の基本防衛政策は「専守防衛」となっている。簡単にいえば「相手から武力攻撃を受けた場合に、初めて防衛力を行使する」という政策で、日本の平和憲法を象徴する言葉の1つといってもいいだろう。しかし、軍事の専門家に言わせれば、この専守防衛は、かなり問題の多い政策なのだという。(取材・文/フリーライター 光浦晋三)
実は「法律」ではなく「政策」
専守防衛の成り立ちとは
中学校の教科書にも載っている日本の基本防衛政策「専守防衛」。平成28年度版の防衛白書によれば、「わが国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する」とされており、専守防衛に関しては「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」と書かれている。
その基本方針は主に3つ。「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使する」「防衛力行使は自衛のための必要最小限にとどめる」「防衛力の整備(自衛隊の総員や装備品など)も自衛のための必要最小限に限られる」というものだ。
ただし、この専守防衛は憲法などで規定されている法律というわけではない。週刊誌などの見出しの中には、「専守防衛」を誤解しているケースも見受けられるのだが、これは「非核三原則」などと同じく日本国憲法の趣旨に則した「政策」であって、法律とは異なるものである。
現在の専守防衛の方針は、1972年に総理大臣だった田中角栄が「専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行なうということでございまして、これはわが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということは全くありません」と答えた国会答弁がベースとなっている。以降、現在の安倍内閣に至るまで、この解釈が基本概念として用いられてきた。