人気投資ブロガーで、『運、タイミング、テクニックに頼らない! 最強のファンダメンタル株式投資法』を出版したv-com2(ブイコムツー)さん。今日は、しばしば申し込むという立会外分売のメリットを紹介します。
8時20分抽選締切→8時50~55分頃に当選発表
→9時からさっそく売れる!
今日は、「立会外分売」のお話です。
立会外分売とは、大株主がある程度の規模の株をまとめて売りたい時に、取引時間外において、たくさんの投資家に、割引価格で買ってもらう取引です。
一般的には1回当たり10万~30万株程度の立会外分売が多いと思います。
私自身、立会外分売を利用することは非常に多いのですが、これに注目すると、いろいろなことが学べます。
まだ、立会外分売を試したことがないという方がいれば、ぜひチャレンジしてみてください。
また、立会外分売をやっていても、短期の値幅取りにしか目が行っていない人も多いと思いますので、今日は、派生する論点について、少し深い所まで学んでいただければと思います。
そもそも、なぜ立会外分売が実施されるのでしょうか。
それは、売る側にも買う側にもメリットがあるからです。
・大株主側のメリット
大量の株を市場内で一気に売ろうとすると、株価が大きく下がってしまい不都合なため、立会外分売を利用することにより、多少割引はしても固定価格で売りたい数量を売れる。
・投資家側のメリット
前日の終値から2~4%程度割引された価格で、なおかつ手数料無料で購入することができる(ただし購入には上限があるうえに抽選という条件付)。
適時開示情報を毎日見ていると、「1~2週間後に立会外分売を実施します」というお知らせが、たびたび出てきます。そして立会外分売が実施される前日には、適時開示情報において、「本日終値の〇%引きにて立会外分売を明日実施します」というお知らせが出ます。
立会外分売は、主要なネット証券であれば、ほぼ取り扱っているので、ネット証券の立会外分売のページから、前日~当日朝(多くは8時20分が最終期限)に抽選の申し込みをすることができます。
そして、通常であれば、8時50分~55分ころに抽選結果が判明します。
市場は9時にスタートですから、立会外分売に当選したら、すぐ売ることも可能なわけです。
立会外分売はなぜ
初心者におすすめなのか
立会外分売は、一見、ややこしそうだと思うかもしれません。
でも、以下の理由で、株の初心者にもおすすめできます。
・割引価格+買いの手数料無料
前日の終値から約2~4%引きで、しかも手数料無料で購入できるため、この点だけ見れば投資家側に非常に有利です。
9時の寄り付き時に市場でいくらで売れるかにもよりますが、いきなり分売価格割れでスタートするケースはそれほど多くない印象です。分売価格より上の株価でスタートすればプラスのリターンとなります。
・少額から投資可能で低リスク低リターン
たとえば、立会外分売をひたすら申し込んで、当選したら9時に売るだけということをやっている人もそれなりにいそうです。数百円とか数千円程度の利益にしかなりませんが、IPOと比較すれば当たりやすいため、投資に慣れるという意味ではなかなか良い方法ではないかと思います。
・ブログ等で他人の注目ポイントから学べる
何も考えずに、ひたすら立会外分売に申し込むだけだと、たまに大きくマイナスになるような銘柄を引いてしまうこともあると思います。
しかし、立会外分売は比較的多くの人が取り組んでおり、ブログ等で値動きの予想を書いている人もそれなりにいます。
そういう人たちが、どのような点に着目して立会外分売に参加、または不参加を決めているのか、そして実際の値動きがどうだったのかを観察しているだけでも、勉強になると思います。
そして、それを続けることで、自分でもある程度は予想が立てられるようになるはずです。そういう分析と観察の体験が非常に重要です。
それではここからは、値動き以外のもっと深い部分を解説していきます。
それは、大株主が立会外分売を実施する“ウラの意図”についてです。
もちろん、たんに大株主が持ち株を売りたいからというのも1つの理由でしょう。
しかし、その他にもさまざまな理由があると考えられます。
特に、社長が大株主の場合は、企業の意図が立会外分売に隠れていると考えられます。
そこで、立会外分売を、投資家の立場で考えるだけでなく、企業側の立場から考えてみることにしましょう。
・流動性の改善
流動性とは、日々の取引量のようなものです。
大株主の持ち株比率が大きすぎる場合、売り注文も買い注文もまばらで、なかなか取引が成立しない場合があります。そこで、広く浅く、多くの人に株主になってもらうことで、日々の取引量を増やし、会社の実力に見合った、適正な株価になることを意図して行われることがあります。
・昇格要件を満たすため
東証2部や東証1部などの上位市場へ昇格するためには、満たさなければならない要件があります。
たとえば、株主数が、東証2部で800人以上、東証1部で2200人以上必要なため、これを満たすために、立会外分売を行って、株主の数を増やそうとしていると推測できます。
また、少々難しいのですが、流通株式比率という要件もあります(「浮動株」と混同している方が非常に多いですが別物です)。
東証2部で30%以上、東証1部で35%以上となっており、これも立会外分売をすることで、要件を満たすことがあります。
・降格要件を避けるため
逆に、東証1部の会社が東証2部に降格になってしまうのを防ぐため、という場合もあります。
たとえば、東証1部の会社の株主数が2000人未満になると2部降格の対象になりますので、猶予期間1年の間に株主数を増やさなければなりません。そんな時に立会外分売がよく使われます。
日々、適時開示情報を見たり、立会外分売に参加したりして、自分で調べる習慣を持つと、自然と知識が身に付いてくるものです。
やはり、実際に自分で継続して経験してみるのが、一番勉強になります。
立会外分売が実施される前後の値動きは、短期的には需給(売り手と買い手のニーズ)で動きます。
そこで、立会外分売に参加することは、需給というものを実感するトレーニングにもなります。
一方で、立会外分売終了後の中長期的には、流動性が改善されるとともに、上位市場への昇格等の材料が出てきて、ファンダメンタル面(企業の価値そのもの)が反映されやすくなります。
立会外分売に注目して周辺知識を調べていくと、学べることがたくさんありますよ!
なお、発売中の私の著書『運、タイミング、テクニックに頼らない! 最強のファンダメンタル株式投資法』では、たった3つの点に注目することで、立会外分売に限らず、企業のさまざまな資本政策(増資・売出・自社株関連取引など)の、企業への影響、株価への影響がわかるように、まとめて掲載しています。
これを知っておくと、日々の企業の開示の中で、たくさんのことに自分で気付けるようになると思いますので、ぜひ読んで整理してみてください。