拡大志向のきしみから2006年の3月決算で赤字を出したことから、NOVAは一転して経営を筋肉質に変えるべく、事業すべてを15%圧縮するという方向に舵を切った。その結果、2007年3月決算は利益面では上方修正となりそうな気配を感じていた矢先、経済産業省の立ち入り検査が入った。2月14日のことだ。ここからNOVAは混乱に陥っていく。
Q 2月14日の立ち入り検査の理由はなんだったんですか。
猿橋 まったくわからない。理由ははっきりしませんが、社内の調査報告書によると、検査官が「講師の質の悪さ」「予約の取りにくさ」の証拠を集めろと言っていたようです。とはいえ検査は数時間で終わり、重い処分を受けるとは思っていませんでした。
ところが、その翌日の新聞一面に「NOVA立ち入り検査、業務停止か」といった記事が出ました。大阪の本部には新聞やテレビが来て大騒ぎになりました。報道で騒ぎが助長して、収束するのに2ヵ月くらいかかりましたね。
Q 事業への影響はどれくらいありましたか。
猿橋 そもそも3月というのは、年間の売り上げ3分の1を占めるんです。ところが、報道のせいで入学者数がまったく伸びず、2~5月のキャッシュフローのロスが例年に比べ約120億円にふくらみました。
Q 経営的にかなり大きいダメージですね。
猿橋 2007年3月決算は、再び赤字でした。2月の大騒ぎがあってから1ヵ月ちょっとですから、立て直せなかった。資本の増強が必要なので、知人の社長に優先株を30億円分持ってもらうこと話がついていました。
あるチェーン店を展開されている会社の社長で、シナジーも十分にある。その時点では30億円あれば十分立て直せると考えていたんです。そこに、4月に入って三井住友銀行の法人部長が来られて、「資本注入が必要だ」と言って、大和証券SMBCをFA(ファイナンシャルアドバイザー)に勧めてきました。大和証券SMBCが、ファンドや事業会社に声を掛けていくというわけです。私としては30億円の話があったので、FA契約はしますが、私が自分で勧めている話は阻害しないでくださいと言ったんです。