ブラック企業に泣かされないため
入社前の「予防策」を意識しよう
私は、過去、ブラック企業で働いていたことがあります。大学卒業後、大手就職サイトに求人が掲載されていた、美容商材を取り扱う専門商社に新卒入社しました。そこは絵に描いたようなブラック企業でした。
サービス残業は月100時間を軽く超え、手取りはたったの16万円。上司からのパワハラ(殴る、蹴る、草むしり、トイレ掃除など)は日に日にエスカレートしていき、最終的には「勤務態度不良・成績不良」という理由から会社を解雇されました。解雇されたのは入社2年目を迎えたばかりの4月前半です。桜舞う素晴らしい季節でしたが、当時の私は絶望の淵にいました。
このまま泣き寝入りしたら絶対に後悔する……。当時23歳だった私は、人生を賭けるつもりで会社を訴え、20ヵ月ほど法廷で争った後、和解金として700万円を獲得しました。その後はフリーライターとして活動し、在職か転職かの二者択一を迫られがちな日本のサラリーマンに「会社と戦う」という第三の選択肢があることを提唱しています。
しかし、現行の制度では「会社と戦う」という選択肢は課題が山積みであり、正直に言うと、私は「会社と戦う」という選択肢を提唱はできても推奨はできません。そのことは、以前ダイヤモンド・オンラインに掲載された私の記事「ブラック企業の元営業マンが教える、会社に人生を奪われない心得」「ブラック企業の壮絶パワハラ、体験者が明かすサバイバル術」でも詳しく述べています。
だからこそ私は、ブラック企業に入る前の「予防策」に力を入れるほうがいいと考えています。これは私個人の願望に留まらず、社会全体で力を入れていくべき課題だと考えています。つまり就職活動(転職活動)の時点でブラック企業を発見、そして回避することが、ブラック企業から労働者を守る、最も合理的な方法だと考えています。
ブラック企業に対する世論の関心は、以前と比べて明らかにトーンダウンしているように感じますが、理不尽な労働環境下で命を削りながら働いている人は、今この瞬間もたくさんいるはずです。これから社会に羽ばたこうとしている就活生たち、そしてキャリアアップを目指して転職活動に励む若手ビジネスパーソンたちは、ブラック企業の罠に陥らないための「予防策」にもっと意識を向けるべきではないでしょうか。
本稿では、私が色々な活動をする中で見えてきた「ブラック企業など他人事」といった意識の問題も含め、ブラック企業の求人が日本社会から消えない構造的な問題について、考えていきたいと思います。