東京・新宿で20年以上にわたって訪問看護に携わり「市ヶ谷のマザーテレサ」と呼ばれる訪問看護の第一人者、秋山正子氏が東京・豊洲にがん患者やその家族が気軽に立ち寄れるサポートセンター「マギーズ東京」を立ち上げた。『週刊ダイヤモンド』の5月13日号の特集は「がんと生きる ~仕事 家庭 家計 治療」。特集に登場したマギーズ東京の全貌を秋山正子共同代表理事兼センター長に聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

――マギーズ東京は、どんなところですか。

あきやま・まさこ/1950年生まれ。聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)卒。末期がんの父と姉の在宅ホスピスケアへの関わりや、訪問看護25年の経験から、マギーズセンターの日本招聘に尽力、センター長に就任。看護師・助産師・保健師 Photo by Rika Yanagisawa

 簡単に言えば、がん患者のために開かれた、病院と家の中間にある「第2の我が家」のような場所です。どのステージ(進行度)の人でも、予約不要で好きな時にふらりと来ていただける。看護師や心理士などの資格を持つスタッフが数人常駐していますので、何か相談をしたり、お茶を飲みながらお喋りするだけでも構いません。

 私たちスタッフは、患者さんが必要としている情報へのアクセス方法を提供したり、何か考えるための手助けをします。それらは全て無料。2016年10月にオープンしてから半年で約2700人がいらっしゃっています。

――マギーズのコンセプトは?

 英国の造園家でがん患者のマギー・ジェンクスさんの“理想の場所”を体現したのがマギーズセンターです。彼女は乳がん患者で、再発転移を告げられ余命わずかという時に、「もう少し自分の体に向き合いたい。食べ物や治療についても、もっと知りたい」と思ったんですね。けれど病院は医者と患者がじっくり話すような環境では無いわけです。そこで彼女は、著名な建築評論家である夫に相談したわけですよ、そういう場所を作るにはどうしたらいいのかと。

 担当看護師などの協力もあって、彼女が闘病していた英国・エジンバラにある病院の隣に、最初のマギーズセンターが1996年にオープンしました(マギー氏はセンターができあがる前に逝去)。

 エジンバラの評判を聞きつけ見学した人々により、その後、英国内で続々とマギーズセンターができていきます。エリアもスコットランドからイングランドへ広がりました。2008年にはウェストロンドンがオープンしました。