スマホやSNSの使用が当たり前となった現在、ネットユーザーを対象にしたマーケティングの手法は多様化してきている。そうした中で、注目を集めているのが消費者の購買意欲を刺激する「インフルエンサー」の存在だ。ネットマーケティングにおけるインフルエンサーの新常識とは。(取材・文/松原麻依[清談社])
かつては有名人限定だったが
今や一般人も「インフルエンサー」に
従来、インフルエンサーとは知名度が高く、メディアに対しても影響力のある人の総称だった。だが、近年では著名ではないユーザーがマーケティングを支援する場合が増えてきているという。
インフルエンサーという言葉が広く認知されるようになったのは、個人がネットを介して口コミを発信することが一般的になった2000年代に入ってからだ。ブログがブームとなった00年代初期には、発言力の高いタレントやモデル、有名ブロガーなどの著名人がAmeba Blog(通称アメブロ)などを利用して商材をアップすることで、次々ヒット商品が生まれていった。
だが、現在は必ずしも「インフルエンサー=著名人」というわけではない。インフルエンサーの語源「influence」は、影響・感化・効果という意味であり、すなわち誰かに対して何らかの影響を与えていれば、一般人でもインフルエンサーと呼ぶことができるのだ。実際、数年前から、自作した動画をYouTubeにアップして広告収入を得る一般人たち、通称「YouTuber」が増えているが、彼らもインフルエンサーと言えるだろう。
「近年、企業がインフルエンサーを起用する際、『どれだけ認知度があるか』ということに加え、『どれだけその商品のことが好きで詳しいか』を選定の基準にすることが多くなっている」と話すのは、インフルエンサーマーケティングのコンサルティング事業を率いる高橋遼氏(株式会社トライバルメディアハウス)だ。
一般消費者がSNS上に商品をアップすることで、他の閲覧者がその画像や口コミの影響を受けることは往々にしてある。たとえば、スターバックスの新作ひとつをとっても、商品を購入した誰かがSNS上にアップすれば、他のネットユーザーの目にとまることになる。商品の写りが良かったり、味の感想などが書かれていれば、「自分も飲みたい」と思う人もいるはずだ。彼らは特に商品の購買を積極的に自ら勧めているわけではないが、「これが良かった」という本音の体験は、より説得力を持ったコンテンツとして、閲覧者に影響を及ぼしているのだ。