さきの米中の首脳会談や、その後、中国による北朝鮮への制裁が強化されたことを見るると、トランプ大統領と習近平主席との間で、北朝鮮問題に関する認識が共有されたと見る専門家は多い。朝鮮半島で有事が勃発すれば、米国との直接対峙を避ける「緩衝国」の役割を担ってきた北朝鮮を失うことを恐れて中国が北朝鮮の暴走を抑えるだろうという米国の目論見は、いまのところ、当たった形だ。

 今後も中国は北朝鮮に対する圧力を強め、ミサイル・核開発の放棄を求めるだろう。トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領とも電話会談を行い、朝鮮半島情勢に関する一定の認識を共有したと見られる。

 ただ、北朝鮮が核開発を止めるとも考えづらく、14日も弾道ミサイルを発射して、韓国新政権を「威嚇」するような行動をとった。

 米中露が一定の見解を共有したとの見方が正しければ、北朝鮮の孤立は深まるだろう。だがそれに加えて、韓国の新政権が日米との距離をとり始めると、韓国までもが「北朝鮮包囲網」から遠ざかることにつながる。

 韓国と日米の距離感が、想定以上に広がってしまう恐れもあり、また経済改革がうまく進まない中で、韓国社会の混乱や不安定が強まれば、北朝鮮に自制を求めることも難しくなるだろう。

 今後、38度線を挟んで米中の緩衝国となってきた北朝鮮と韓国が、強力な後ろ盾から後ずさりし、距離を置く状況が鮮明になるシナリオは排除すべきではない。いわば、米中など大国が朝鮮半島に作った安定の“枠組み”が弱まって、力の「真空状態」が生まれることになる。それがきっかけになって南北の対話が進むのか、あるいは朝鮮半島情勢が一段と不安定になるのか。「吉」出るか「凶」となるかは、今後の展開次第だが、不透明感は一層、強くなったといえる。

慰安婦問題で反日姿勢強まる
必要なのは冷静さと大人の対応

 日本は新政権とどう向き合えばいいのか。朝鮮半島情勢の混迷がひどくなることは、日本にとっても好ましいことではない。安全保障上の問題に加えて、地政学リスクが高まると、経済・金融市場にはマイナスの影響が波及しやすい。それは4月上旬から半ばに北朝鮮問題への懸念から株価が下落し、円高が進んだことからも推察される。

 問題は、朝鮮半島問題に関して、日本が単独で、直接できることには限りがあることだ。安全保障面では米国との関係を重視してうまく協調することが求められる。それに加えて、中国、ロシアとの関係を着実に詰めておくことも欠かせない。

 それを進めながら、韓国新政権の政策運営を冷静に分析し、出方を見極めることが現実的な対応だ。文政権はこれまで以上の反日姿勢を示し、慰安婦問題の再交渉などを求めるだろう。ただそうした韓国を感情的に批判するだけでは何も生まれない。慰安婦問題では、2015年12月の「最終的かつ不可逆的な」政府間の合意の遵守だけを冷静に求めればよい。何を言われても、この姿勢を重視すべきだ。同時に「韓国の孤立化」を防ぐために、協力すべき問題では「大人の対応」をすることだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)