現行の『青田買い』は税金泥棒のようなもの
翻って現在のわが国の企業の採用システムについて、原点に立ち戻って再考してみよう。現在の採用システムは、俗に「青田買い」と呼ばれているが、とある4コマ漫画に次のようなものがあった。まさに正鵠を射ているではないか。
「入学おめでとう。大学では何をするんだい?」
「1年目は受験勉強の疲れを取るために遊びたい。2年目は就活の準備。3年目に就活をして、4年目は会社が決まったので学生時代を謳歌して遊ぶんだ」
「おいおい、いつ勉強するんだい?」
わが国は、国立大・私立大を問わず、大学に、毎年、1兆5千億円以上の税金を注いでいる。それはなぜか。わが国の明日を担う若い世代に、しっかり勉強してもらって、わが国の社会・ビジネス界の国際競争力を強化してもらいたいからではないだろうか。それなのに、青田買いという悪習は、学生が勉強することを事実上妨げている。結果から見れば、企業の青田買いは、いわば税金泥棒のようなものである。
もっとも、大学での勉学と社会・ビジネス界での競争力強化との間には明確な相関関係はないという説もあるようだが、それなら大学に対する税金の投入は直ちに止めるべきであろう。けだし、税金は公共財や公共サービスに対して投入されるべきものであるからだ。
青田買いに対応すべく一部の大学では、授業の一部を割いて、名刺の受け渡しを特訓しているという笑えない話も聞く。私たちの税金で、そのようなことを大学に教えて貰いたいと思っている市民はおそらく皆無であろう。
筆者は、青田買いという悪習を是正するためには、例えば経団連のようなわが国の産業界を代表するきちんとした組織が音頭を取って、「少なくとも新卒者については、卒業証書と成績証明書を持参しない限り、一切入社面談はしない(あるいは企業の側から学生に接触しない)」と申し合わせるべきだと考えているが、秋入学の導入は、青田買いという歪んだ悪習を撲滅する格好の機会になるのではないか。
卒業から入社まで、半年のギャップイヤーがあるので、上記のような申し合わせが実現すれば、少なくとも大学の4年間は安心して勉学に打ち込めることになる。因みに筆者の会社はダイバーシティを何よりも重視しているので、定期採用については新卒の定義を30才未満とし、最初は字数無制限の論文2編の提出だけで、最終段階まで面談は行わない採用システムを採っている。