あるとき、たまたま観たテレビで、成功している有名なスポーツ選手のインタビューが放送されていたのですが、その選手が話していた内容も同じようなことでした。

 インタビューでその選手が言っていた内容は、

「人生は山あり谷ありだと思っていて、その谷はどんなに深くても構わない。なぜなら人が体験したことのないぐらいの谷を経験した人間だけが誰も登ったことのない高さの山に登れるという哲学を持っているから。苦しみに出合うことはすごくラッキーなことで、これに正面衝突していかないと大きな栄光は手にできない」

 というものでした。この選手も、マイナス要素を成功の前提条件としていました。

 そして私は、自分から積極的に面倒くさいこと、苦しいこと、つらいことを探して優先して取り掛かるようにしたのです。

 おかしな人と思わないでほしいのですが、何か行動するときには頭の中で、「つらさを望む、苦しさを望む」と繰り返していました。

 つらさ、苦しさを望む、といってもそんなに大げさなものではありません。謝りの電話をかけるのは誰にとっても嫌なことですが、これも「つらさを望む、苦しさを望む」を意識してすぐに電話をかけるようにしました。

 また、日課にしている運動でも、「面倒くさいから今日ぐらいいいか」という思いが浮かんできたら、「つらさを望む、苦しさを望む」を思い出して重い腰を上げたり、部屋が散らかってきたら先延ばしにせずすぐに掃除をしたりと、そういう小さい行動を続けているうちに、徐々に意識が変化していったのでした。

 そのおかげで新しいことへの挑戦にも一歩を踏み出すことができ、その結果、記憶力日本一、さらに日本人初の記憶力の世界グランドマスターになることができたのです。

 試験などの目標に向かって行う日々の勉強も、誰にとってもあまり楽しいものではありません。どちらかというと苦しい部類に入るかと思います。スランプのときなどはサボりたくなる気持ちもよくわかります。

 そんなときでも、「つらいのは当たり前。この苦しみを乗り越えた先に喜びがある。つらさを望む、苦しさを望む」という意識が気持ちの根底にあれば、目標に向かって挫折することなく勉強も続けていくことができるのではないでしょうか。