実際に事故が起こったから、リスクの全体像が示されたかというと、そうではないです。調査報告所はいくつか出ていますが、あれは事故原因についての調査です。

 事故そのもののリスクについては、県で技術的な新しい検証ができるわけではないと思います。ただ、これまでの報告書や今ある情報をきちんと検証していく。報告所の後に、出た知見もありますからね。

 どんな被害が出るのかということも検証していきます。健康にはどのような影響が出るのか。社会的な影響はどうなのか。多くの人が避難して、町が放棄されると、野生動物が繁殖してしまい、復活させるのは非常に難しいということがわかってきました。こうした健康や町の被害の全体像を明らかにしていきたいです。そして、それらを防ぐためにはどうしたらいいのかも考えていくべきでしょう。

 避難計画については、事故の全体像を踏まえて練るべきです。例えば、ベントする場合、水素爆発が起こる場合、それぞれでどの程度放射性物質が放出されるのかを踏まえ、それを前提にして、避難計画も考えるべきです。そうすれば、避難そのものに、どれだけの人や費用、体制が必要なのかがわかってくる。

 ここまでいくと、ほぼ全体像として、もし事故がおこったときは、何がどのように起こって、それをどう防いだらいいのか。それには、どのくらいのコストがかかるのか。どう避難するのかといったものが見えてくる。

 こういったマイナスのコストをきちんと計算して、ベネフィットと比べて、原発再稼働について考えるべきです。ベネフィットの部分だけを見て、再稼働しましょう、というのは、それはおかしいということです。

――マイナスのコストを明示するということをおっしゃいました。明示した上で、それをすべてなくしていくという考え方なのでしょうか。

 いや、ゼロはありえません。あらゆるものにはリスクはありますし、ゼロにはできない。

 事故のリスクは永遠にあり続けます。小惑星が突っ込んでくるかもしれませんよね。大切なのは、マイナスのコストを認識しておくことです。それをすべて理解して、原発再稼働は結論を出すべきです。そこに蓋をしておくのは正しくない。マイナスのコストを、可能な限り減らすことをしないといけない。