自身の演奏を動画にアップ。日本最古の「演奏してみた」
―― なるほど、細やかな配慮がなされているのですね。演奏したものを動画にアップといえば、松澤さんは、「演奏してみた」を日本で最初に行った人とも言われていますね。
松澤 日本で最初は大げさかと思いますが、少なくともニコニコ動画での自身でアップした「演奏してみた」動画では最古とされています。初めてYouTubeに自分の演奏した動画を上げたのは2007年1月ですね。当時はまだ、「演奏してみた」とか「踊ってみた」といった呼び方はなく、動画コンテンツも今に比べれば相当少なかったです。もちろんユーチューバーもいませんでしたし、それこそスマートフォンもなかった時代でしたので、デジカメで撮影した動画をパソコンに取り込んでアップロードしていました。
実は、YouTube登場前から、自分が演奏したものをネット発信していました。2002年から自身のWebサイトを持っていて(このサイトは現在は閉鎖済み)、MIDI(1990年代に全盛だった音楽ファイル形式)ファイルやmp3ファイルで駅メロやファミコンの音楽などを細々とアップしていました。たまに誰かが掲示板にコメントを書き込んでくれたのが嬉しくて。
よく、自分が行ってみて美味しかったお店の情報を教えてくれる人っていますよね。それと同じで、駅メロにしてもゲーム音楽にしても、自分が好きなものや良いと思ったものをいろんな人に伝えたいというのがすべての根底にあります。
―― 『鉄のバイエル』という楽譜集も同じ思いで作られたのでしょうか?
松澤 そうですね。『鉄のバイエル』に関していえば、自分で演奏する楽しさを味わっていただけたらという思いもあります。特にお子さんをお持ちの親御さんから「ピアノの練習を嫌がっていた息子が『鉄のバイエル』を楽しそうに弾いている姿を見て感動した」といったコメントをいただくことがよくあります。『鉄のバイエル』が、ピアノの練習が楽しくなるきっかけとなったのであれば、これほど嬉しいことはありません。
――本(楽譜集)をきっかけに、演奏して誰かに届ける喜びを知る人が増えるといいですね。ありがとうございました。