信じる者が儲ける
なんて言わないよ絶対

 「なでしこジャパン」の試合を見てなんとなく考えたのは、東京都大会でベスト8を賭けて対戦した高校の選手のこと。相手チームはオリンピック選手を何人も輩出しており、直前の全国大会でも優勝した強豪校でした。

 それまで、全国レベルの選手と対戦したことはありましたが、全国トップレベルとは戦ったことはありませんでした。試合前から力の差は歴然でしたが、とは言っても「何とかする可能性はあるんじゃないかなぁ」と少しの希望を持っていたことも事実。しかし、いざ試合が始まってみると何一つできないまま、あっという間に負けてしまいました。

 全国レベルと全国トップレベルの選手にあれほどの違いがあるとは考えたこともありませんでした。開始の合図が鳴っても、自分からは一歩も前に踏み出すことができないほど、相手選手との差を感じていました。そして、練習量も意気込みも圧倒的に差があることは承知していましたが、それだけではない決定的な才能の差に気がつきました。しかし、それだけの選手であっても、その後オリンピック出場はおろか、現在も選手として続けているかどうかさえ聞こえてはきません。

 スポーツに限らず、どんなに才能ある人であっても、チャンスに恵まれずになかなか認められないというケースは多々あるのだと思います。しかし、その人の可能性を信じて、不遇な状況に置かれているときでも追い続けられるメディアこそ、その人が評価されたときに信頼を勝ち得ることができるのだろうなとあらためて思います。

「なでしこジャパン」のことを振り返ってみると、グループリーグを闘っていた時期はメディアの扱いもそこまで大きなものではありませんでした。しかし、準々決勝、準決勝と勝ち上がるにつれて注目度も高まり、優勝のニュースはすべての局で放送されていました。

 急遽集めた情報を面白く仕上げる力も凄まじいと思いますが、やはり注目される以前から地道な取材活動を続けていた記者に勝ることは難しいのかなとも感じてしまいます。それはおそらく、本という形にしてみても同じなのかなと。「自分はそれを実行する嗅覚と根気を持ち合わせているのか?」と自問自答しました。

 そして、高校時代に対戦した選手のように、「これは凄い!」と感じた人の一挙手一投足をどんなときでも追い続けていきたいと思いました。