スタンフォードのエリートが「マインドフルネス」に魅了される理由リア・ワイス(Leah Weiss)博士

 経営大学院は宗教を教える場ではありません。自己認識力、共感力、倫理観を養う場所です。ですから、私の授業でも、カルマといった宗教的なことを取りあげることは一切ありません。そのかわりに、モチベーションを高める、自分の価値観を確立する、倫理観を養う、といったことに焦点をあてて、教えています。

佐藤 瞑想と聞くと、どうしても宗教的で非科学的な印象を受けますが、マインドフルネスの効果は科学的データや調査に裏打ちされているそうですね。脳を鍛えることによって、人間性も生産性も高めることができるというのは本当でしょうか。

ワイス もちろんです。マインドフルネスの効果は、過去30年間にわたっておこなわれてきた研究で立証されています。授業では、様々なバイオマーカー(生体指標)を使って、その効果を説明しています。

 マインドフルネスを実践したら、どのように体に影響を及ぼすのか。授業では、脳の変化を示したfMRI(機能MRI)の画像データ、テロメア(染色体末端部位)、迷走神経、脳波、ゲノムの変化を示した研究結果などを紹介しています。社会心理学や個人心理学(いわゆるアドラー心理学)の調査結果をとりあげることもあります。

佐藤 日本の政治家や経営者の中にも、寺院での瞑想を習慣にしている人は多くいます。日本には「リーダーは瞑想して正しい決断を下す」という伝統があるからです。昔は「瞑想がリーダーシップに効果がある」という科学的データはありませんでしたが、今から思えば非常に理にかなったことをしていたことになりますね。

ワイス 私は日本の伝統ある仏教文化に多大なる敬意を抱いていますから、私が経営大学院で教えていることに限界があることは認識しています。学生が学んでいるマインドフルネス、瞑想法と人間関係のスキルなどは、仏教の教えの一部でしかありません。仏教の伝統には美しくて深淵な教えがまだまだあることを忘れてはならないと思います。