つまり、銀行店舗でのイライラの種である「紙に書く」という行為を徹底的に排除し、顧客の利便性の向上や待ち時間の短縮を図ったのだ。併せて、ペーパーレス化によって職員の業務の効率化という課題も同時に解決できる。

 まさに一挙両得という新型店舗だが、「実は当初からペーパーレス化を推進していたわけではありませんでした」と、銀座支店の店舗改革を統括していたチャネル戦略部の丸山光は、苦笑いする。

 時は、銀座支店オープンまで残り1年を切った2016年の夏。個人営業部門の担当役員が発した言葉が、丸山を震撼させることになる。「ペーパーレス化を、銀座支店の目玉にしたい」──。

 それまで部分的なペーパーレス化は計画していたものの、大々的に展開するとなれば、店舗設計そのものを根本からやり直さねばならない。ましてや残された時間は少ない上、すでに関連する複数のプロジェクトがスタートしている。

 驚きはしたが、ペーパーレス化がもたらすメリットを見詰め直し、「これこそ顧客のためになるはずだ。やるしかない」と、丸山は腹をくくった。

部門間の対立を乗り越えて完成したペーパーレス窓口

 最大のハードルは、システム開発だった。これから開発すると新システムが完成するのは、オープンの直前だ。期待通りに完成するかどうか未知数な上、新システムを職員が使いこなすための訓練を行う時間はほぼ取れない。

 職員の顧客案内を統括する事務部門から「時間が短過ぎて対応できない」と、反対の声が上がった。顧客が店頭で困らないようにスムーズに案内することが最重要課題の同部門にすれば、一時期のこととはいえ、顧客利便性が低下することは本末転倒というわけだ。

 さらに、時間との闘いは店舗のデザインにも広がっていた。

 実は、新しい銀座支店は、「本棚を置くなど、木目調の落ち着いたサロン風の店舗を予定していた」(丸山)という。それが、ペーパーレス化を前提とする店舗に方針転換して以降、“ある意見”が店舗改革チーム内に広がり始める。

「もっと先進性をイメージさせる店舗の方がいいのではないか」

 それは、至極当然な意見だった。とはいえ、すでにサロン風のデザインで工事に取り掛かっていた。言わずもがな、店舗造りを担う管理部門は大反対。だが、すでに腹をくくっていた丸山は、店舗のデザインを一から変えることを決断した。