プレゼンでも
社内の決起集会でも使える!!

 例えば、プレゼンテーションなどでよくある、こんな言い方です。

「おいしいカレーを作るためのポイントは、3つあります! 1つは…」という表現のしかたですね。この「3つあります」表現の強さは、最初にそう言われてしまうと「じゃぁその3つを聞いてみたい」と思わせてしまうところにあります。つまり、くわしい中身も言わず「3つある」と言われると、聞いたほうは「え? なに? なに?」と心を動かされる。そのあと「1つは…、」と説明を受けることで。「あ~そういうことだったんだ」と納得できる形になっているんです。いわば、この緊張から緩和へ進む心の動きが、ある種の快感を生み出し、聞いたほうに満足感が得られるのです。

 他の例もあげてみましょう。突飛なたとえをして、あとで解説のパターンです。

「私、昔から便所の百ワットと言われております(何それ?)。無駄に明るいそうです。(うまいこと言うな~)」

「便所の百ワット」はある程度の年齢以上の方にはおなじみのフレーズで驚きはないかもしれませんが、「私、無駄に明るい奴だと言われています。便所に百ワット電球をつけているみたいなんだそうです」と比べてみると差は歴然ですよね。ちょっと突飛なたとえをして、あとでその理由を言う。落語の謎かけのような言い方です。これも「びっくり→しっかり」法の一種です。

 この話し方、本当に使い勝手がいいですよ。例えばプレゼンテーションで、「御社の悩みを解決する方法があります。(え? それって何?)私たちのサービスを導入していただくことです。(そうなんだ~)」
ふつうに「私たちのサービスを導入いただければ御社の悩みは解決します」と言うより、強くメッセージを届けることができます。

 社内の決起集会で、
「これは目標を達成するための集まりではありません。(え、どういうこと?)皆さんの実力からすれば目標達成は当然。その前祝いをするためです!」

 まだつきあう前の女性が、意中の男性に、
「あなたとはもう会いたくない。(え?)これ以上会うと好きになってしまいそうだから」

 これは、人によってはあざとすぎると感じるかもしれませんね…。

 強調効果を狙った言い方のため、やりすぎには注意しなければいけませんが、覚えておいて損はない言い方です。あくまで言いたいことを相手の心に強く届けるための、「ざっくり→しっかり」法のバリエーションの一つとして覚えてください。

 

* 心に届く話し方ルール *
まず「びっくり」させる。そのあと説明する

ひきつける話し方は、「びっくり→しっかり」法で

松本和也(まつもと・かずや)
スピーチコンサルタント・ナレーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から株式会社マツモトメソッド代表取締役。
アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説」「NHKスペシャル」「大河ドラマ・木曜時代劇」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況など。
現在は、主に企業のエグゼクィブをクライアントにしたスピーチ・トレーニングや話し方の講演を行っている。
写真/榊智朗