こうしたことを考慮すると、多焦点眼内レンズが向くのは、日常生活で眼鏡をかけたくなく、白内障以外の眼の病気がない人ということのようだ。

 厚生労働省によると、7月15日現在、多焦点眼内レンズの先進医療を行う医療機関は164件。先進医療では、1年以上の治療経験などの要件を満たした眼科専門医がいるといった施設基準が設けられている。

 さらに、「多焦点眼内レンズでも従来の単焦点眼内レンズでも、手術の手技はほとんど同じ。しかし、多焦点眼内レンズの場合、術後の乱視を起こさないために切開の幅を小さくする技術や、眼の中心にぴったりとレンズを挿入する技術が必要になる。というのは、レンズの位置がコンマ数ミリずれるだけで見え方の質が変わってしまうからだ。従って、熟練した医師の手術が望ましい」と宮島教授。

 多焦点眼内レンズには、メリットとともにデメリットもあるだけに、術後の見え方について、十分に事前の説明をしてくれるかどうかも医療機関選びの鍵だろう。東京歯科大学の場合、患者の職業や趣味による必要性や、本人の希望などを聞きながら説明に時間をかけるという。

 多焦点眼内レンズ挿入術にかかる費用だが、先進医療施設である東京歯科大学水道橋病院の場合、片眼32万円に保険診療分約2万円を加えた価格になる。一方、多焦点眼内レンズは、白内障ではない人の老眼の治療にも用いられることがあるが、その場合には先進医療の対象にはなららないので全額自己負担だ。ちなみに、同病院では、両眼で約80万円という。