そもそも保険とは、「誰もが当てはまりそうな事態」
への備えには適していない

 職業によって『差別』するのか?という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、保険加入の際、何かしら制限がある職種が存在する理由は、一般の方にもなんとなくご理解いただけると思います。

 そもそも保険の仕組みは「当たっても嬉しくない宝くじ」のようなものです。数千円の保険料を払っただけでも、万が一の場合、1000万円単位の保険金が遺族に支払われたりするのは、不幸が起きない人、つまり「クジにはずれる人」が沢山いるからです。

 言い換えれば、「クジに当たる人」が一定の割合を超えると、運営ができなくなる仕組みです。そのため、保険会社は、あらかじめ保険金を支払う可能性が高そうな方々の加入はお断りすることにしています。職業による加入制限もその一環として行われているわけです。

 このような事実から2つのことが言えると思います。そもそも保険は、誰もが生々しく想像できる「いかにもありがちな事態」への備えには適していないということ。それから、保険会社は、保険金の支払いが多くなりそうな案件に対しては、事前に「支払いを回避する方向で手を打つ」ということです。

 たとえば、自殺の扱いがわかりやすいと思います。私が保険業界に転職した1995年当時は、契約から1年以内の自殺には、保険金が支払われないことになっていました。それが、景気低迷が長引く中、自殺者が急増したせいでしょうか、数年後から2年以内の自殺は支払い対象外となり、今では3年以内は支払わないことにしている会社がほとんどです。

 その他に、精神疾患の疑いがある場合などにも厳しいと感じる対応が散見されます。勤務地が変わった時に、1週間ほど睡眠薬を服用したことがあると告知したこところ、「医療保険」への加入を断られた方がいらっしゃいました。

 お客様は激怒されましたが、保険会社としては、うつ病などに罹る可能性を懸念してのことだと想像されます。是非を問いたいのではありません。保険とはそういうものなのだと、私は受けとめています。