光陰は矢よりも迅かなり
『涅槃経(ねはんきょう)』という経典の中に、仏道に入る人の違いを、馬と鞭の関係で表した「四馬の例え」という話があります。
○一番目の馬は、振りかざした鞭の影を見ただけで走り出す → 隣村で亡くなった人がいると聞いて、自分の死を考え、求道の心を起こす人
○二番目の馬は、毛の先に鞭が触れてから走り出す → 自分の村に死者が出たと聞いて、他人ごとではないと行動する人
○三番目の馬は、鞭が肉に触れてから走り出す → 親族や親しい友人が亡くなってから、自分も死ぬのだと自覚して行動する人
○四番目の馬は、何度鞭を打たれても気づかず、肉を裂き、骨に達してから走り出す → 自分自身の死期が近づいてからやっと求道を自覚する人
この例え話は、「一刻も早く真実の教えに従って修行し、人々を救う人になりなさい」と教えるものですが、速やかに行動することの大切さを示しています。
また、曹洞宗の開祖・道元も「光陰は矢よりも迅かなり、身命は露よりも脆し」(『修証義[しゅしょうぎ]』)と教え、「時間をムダにせず生きる」ことの大切さを説いています。