日本の大手銀行を最近辞め、毎日が日曜日という生活を楽しんでいる友人S氏がいる。彼はお盆休みを利用して中国の新疆ウイグル自治区を旅している。ウルムチ市やトルファンを回るレポートを、インターネットを通じて送ってくれている。
新疆は何かと物騒なニュースが流れているが、現地を訪れたS氏によると、ウルムチに関しては特に問題は無いように感じられるという。13日にトルファンを訪問した際は行きと帰りに車のチェックなどを受けたが、とても緩やかだったし、空港や市内でも「荷物検査」と書かれた場所はあることはあるが、実におざなりなチェックだったそうだ。
S氏が問題にしているのは治安問題よりも泊まっているホテルの通信事情のほうだった。「ホテルは外見上はそこそこ立派だが、残念ながらソフト面が今一つでトラブルが続出」。例えば、最初の晩に泊まった部屋ではインターネット接続サービスはあったもののケーブルがなく、ひと騒動した。最終的には警備のおばさんが、事務所のPCからケーブルを抜いて持ってきてくれた。2日目に変わった部屋は、ネット環境さえなく、最後はマネージャーがフロントのPCを使わせてくれたという。
この批判を読んで、私は感慨深いものを感じた。中国の辺境の地に行っても、日本人は当然のようにインターネット環境を求めている。いや、日本人だけでなく、中国人の客たちも同じようにそれを求めている。インターネットのユーザー数が2010年末の時点で4億5700万人に達した中国では、これは当然のことと見ていいだろう。
さて、同じ8月、私は日本の「辺境」といってもいい土地を訪れた。長崎県の五島列島だ。インバウンド観光関連の取材のための旅だったが、宿泊先は地元で最高級といわれるCホテルだった。
チェックイン早々、私は面食らった。なんとこのホテルでは、宿泊客用のインターネット環境が整備されていない。客室にインターネットがなくても、ロビーには無線LANが用意されているのだろうと思って確かめると「そんなものはありません」との一言だった。
ネットインフラが整備されていないことにも絶句したが、何よりもその態度の冷たさとサービス精神のなさに驚いた。2度と泊まるものかと内心ではすでに怒り心頭だったが、案内役の県観光連盟の関係者が顔を赤らめるほどに狼狽していたのでそこは紳士的な態度を見せないと、と自戒しつつ次の質問に話題を変えた。