震災から5ヵ月あまりが経つが、まだ被害状況の全容解明には至っていない。中でも把握しづらいのが、個別の家計状況だ。これに危機感を感じた民間企業とボランティア団体が、被災地世帯の家計と生活の実態を把握することを目的に調査を行った。
調査対象は宮城県石巻市渡波地区(一部大街道地区を含む)で、調査実施時期に主に自宅で生活している世帯。調査票を世帯ごとに直接配布し、3~5日後に回収した。調査期間は6月25日~30日。分析対象は530世帯、1844人。調査は、パイプドビッツ(東京都港区)が運営する「政治山」が行い、政治団体「日本一丸」代表の大西恒樹氏と石巻市で活動中のボランティア「チーム王冠」が協力した。
自宅生活者のうち全壊認定55%、半壊32.1%
約9割が全壊・半壊の自宅で生活中
まず、住居の損壊状況を聞いたところ、全壊認定を受けた世帯が全体の半数以上に上る55.0%。32.1%が半壊認定を受けており、「損壊なし」の世帯はわずか6.9%だった。アンケート調査は避難所ではなく、自宅で生活している人を対象に行っているため、87.1%の人々は全壊・半壊認定を受けた家屋で生活を続けているということになる。
水道・電気・ガスなどのライフラインについては、8割以上の世帯で復旧しているのが上水道と電気。下水道は69.2%、ガスは66.4%の世帯で復旧している。最も使用可能世帯が少ないのは固定電話(55.3%)だったが、これはもともと所持していない場合も不可に含めるため、携帯電話で代替している世帯も多いと考えられる。
携帯電話の保有状況は87.2%と高い。このほかの生活必需品について、保有率が低いのはインターネットのできるパソコン(15.7%)。また、エアコンと扇風機をどちらも保持していない世帯が47.0%に上った。
震災後、月額収入ゼロ世帯は76.7%増に
ライフライン復旧後も回復しない被災地の雇用
続いて、収入・支出・収支についても調査。個々の家計状況については答えづらい質問だが、ボランティア「チーム王冠」が地域の人との密なコミュニケーションを取り合ったことにより、実現した部分も大きいという。
調査対象世帯の収入総額(月額)は、震災前の1億3293万円から、44.8%減少の7341万円。これを一家庭に換算すると、月額36万9261万円から、20万3919円にまで収入が減少していることになる。さらに、震災前は6軒だった月額収入ゼロの世帯が、震災後は52軒に(76.7%増)。逆に、月収50万円以上、月収40万円~50万円、月収30万円~40万円の世帯は38~70%減っている。
世帯収支について回答のあった336世帯に限れば、赤字と答えた世帯が半数以上の53.0%。10万円以上の赤字は336世帯のうち20.2%だった。
パイプドビッツの代表・佐谷宣昭氏らが出席した調査発表の記者会見では、「根本的な問題は雇用が失われていること」と指摘。「たとえばカップラーメンを配っても、『保存が利くものは取っておきたい』と言う人も多い。被害の全体像を理解するためには、個々の家計状況を一つずつ把握しなければならないと思った。制度を考える際には、一軒一軒の家庭に寄り添ったリアルな状況を知り理解して取り組む必要があることを、今回の調査が物語っていれば」とも語っている。
純負債の状況、二重ローン問題についても調査した結果については、「政治山」のホームページで確認することができる。
(プレスラボ 小川たまか)