生活費でカツカツなのに
あおられて投資に走る人

 詳しい話を聞いてみると、このセミナーでは、Hさん一家の家計など見向きもせず、ひたすら投資商品を勧めてきたということでした。それはそうでしょう。家計簿を詳しく見ても、生活費だけでもギリギリなのですから、7万円を捻出するのはどう転んでも無理な状況。それではセミナーの主催者は稼ぎになりませんから、老後不安をあおって商品の購入を迫ったのでしょう。

 Hさんは言います。「貯蓄は380万円ほどありますが、子どもの教育費でなくなり、足りないほどです。退職金が出るにしても、今のままでは老後に1億円なんて準備できません」

 Hさんはとても真面目な性格で、どうしても定年までに1億円を貯めなければいけないと考えていました。「1億円という金額そのものに根拠はないんですよ。できる範囲内で考えませんか」と説得しても、なかなか納得してくれません。

 というのも、やはりどこかで、「老後に1億円必要」と聞いた会社の同僚たちが、最近、投資を始めたという話を耳にしたから。みんなが1億円を目指して頑張っているように見え、焦ってしまったようなのです。

 ですがHさん、投資はずぶの素人。日経平均くらいなら聞いたことがありますが、他のことはさっぱり。でも、勧められた投資商品を買わなければと訴えます。

 そもそもHさん一家の状況で、8%もの利回りというリスクの高い金融商品に投資することは、家計を危険にさらすことと同じです。しかも、これから教育費のかかる子どもを二人もかかえた家庭に、毎月7万円も積立投資しろというのは、いかにも乱暴すぎる話です。

 私は、Hさんに強く言いました。「投資でそんなにおいしい話はありません」。そして「そのセミナーは、あなたを食い物にしようとしているとしか思えません」と。

 この言葉で、ようやく落ち着きを取り戻し、私の話に耳を傾けてくれるようになりました。