口座を資金用途に応じて
三つに分けて管理

 Hさんは、大切なことを忘れています。老後のための投資よりも前に、目先、万が一のこと、例えば急な病気にかかったり、仕事を辞めたりして収入がなくなった場合に必要な、当面の生活費である「生活防衛資金」が不足しているということ。だいたい、投資を始めるには、生活防衛資金がしっかりとあり、かつ投資に回していい余剰金があることが大前提です。

 では、どの段階で投資を始めていいのか。一般的な例で見てみることにします。

 口座を大まかに言って三つに分けて考えます。まず、毎月の生活費の予備や、突発的な支出に備えるための「使う口座」に、月収の1.5ヵ月分を貯めます。そして、マイホーム購入資金や教育費など、目的のある貯蓄は除いた生活防衛資金として「貯める口座」に、6ヵ月分を貯めておきます。これらを合わせて月収の7.5ヵ月分の蓄えができた段階で、初めて投資に踏み出していいと考えてください。この投資に回す部分は、いわば「増やす口座」です。

 ただ、最近は金利も低いですし、お金が貯まるまで待っていたら、いつまでも投資ができないという人も多いでしょう。であれば、貯める口座で貯めながら、貯蓄と近い感覚でリスクの低い金融商品に投資するという、併走させるやり方もケースによってはいいと思います。例えば、手数料が安く、資産配分にも意識しながら分散して投資している積立型の投資信託がいいでしょう。

 こうしたアドバイスをしたところ、Hさんは家族を巻き込んで家計の圧縮を始め、毎月4万円ほどの余剰金を出せるようになりました。

 この余剰金を、始めのうちは全額貯蓄していたのですが、半年ほどして生活のペースが安定し、毎月余剰金が出せるようになったため、2万円を貯蓄し、残る2万円を投資信託の積み立てに回す形で、貯蓄と投資を併走させていくことにしました。

「投資でお金を増やすためには、始めるための準備も大切だし、長期的に続けられるような習慣を作っていくことも大切なのですね」と言うHさん。「セミナーで勧められた、高利回りの投資を無理にやらなくてよかった。無理してやっていれば、家計がパンクして、家族もギスギスした関係になっていたかもしれない」と振り返ります。