ロクに仕事もせずに高待遇を貪るだけ
分不相応の待遇が「タダ乗り化」を促す
フリーライダー問題を考えるとき、基礎になるコンセプトがある。
それは「交換」である。
「あいつ、こっちが調べた情報たくさん提供して、人も紹介して手伝ってやったのに、全部自分の手柄として報告しやがって(怒)」
「あの人、一日中デスクのパソコンに張り付いて、ネット見て、ゲームして、申し訳程度の事務仕事して、それで定時退社ですよ。こっちは忙しくてヒイヒイ言いながらサービス残業してんのに(怒)」
私たちは、職場に「労働力」という資源を提供し、その見返りとして「賃金」や「福利厚生」のような待遇という資源を得ている。そしてその待遇は、基本的には私たちの提供する労働力の質や量に見合ったものになるはずである。
フリーライダーとは、その人物の提供する資源に不釣り合いな「高待遇」を得ている者を指す。その分不相応の「高待遇」のぶん、前述の不満のようにワリを食う人が出てくる。
会社組織と自分との資源の交換がフェアではない場合は、いくつかの原因があるが、フリーライダーはその中でも最も重要なものの1つだ。
しかし、拙著『フリーライダー――あなたの隣のただのり社員』でも述べているが、この「資源」の交換がフェアか否かを判断するのは難しい。なぜなら、個々の社員が提供する「労働力」の価値をどう資源として評価するかが、非常に困難だからだ。
フリーライダーはそこにつけ入る。あの手この手で、自分の労働が高い価値を持つフリをし、他人の労働価値を貶める。あるいは、すでに手に入れた地位や役職にしがみつき、価値のある仕事は一切せずに、高待遇だけ享受する。
このように見ると、フリーライダーは「悪い」ことのように思えるが、必ずしもそういった悪意を持ってタダ乗りしている社員ばかりが、フリーライダーではない。そのような社員がいることで、戸惑い、消耗し、ヤル気を削がれた社員たちも、自分たちの労働の質を落としていき、やがてフリーライダー化する。