読み手が触れている「情報」に
自分も触れてみる

私の場合、大きく分けて「人の話を聞く」と「情報に触れる」という2つの軸で、読者の相場に近づこうとします。

たとえば、私が30代の女性向け雑誌に記事を書くとしたらどうするか。

メディアに記事を書く場合は、編集者に読者と目的を聞きます。
「誰が読者で、その人は何のためにこの文章を読むのですか?」と聞く。

それと並行して、読者になりそうな知人の30代女性に話を聞くことも多い。
何に「興味」があるのか。どんな「情報」に触れているか。
何を知っていて、何を知らないのか。
そういうことを聞いていく。

そして、彼女たちが触れている情報に、自分も実際に触れてみます。
女性誌を立ち読みしたり、女性向けのWebメディアの記事を読んでみる。

そこでは、どんな「言葉」が好まれているか。
どんな「商品」やどんな「色」に人気があるか。
そういうことを体感しておくのです。

たとえば、現在、日本最大のWebメディアであるYahoo!ニュースには、あらゆる世代に向けた記事が掲載されています。

そこでまず、Yahoo!ニュースの中で想定読者に向けられた記事を見つけて読んでみる。記事の下には、関連記事のリンクが貼られています。それをたどって5、6本も記事を読むだけでも、おおよその「相場観」がつかめるはずです。

雑誌やwebの記事を書く、というのは特殊な例だと思われるかもしれません。
でも、一般のビジネスパーソンが書く文章も、事情は同じです。

たとえば、自社のAI(人工知能)技術に関する紹介文を書くことになったとします。

就活サイトの会社紹介文として学生が読む文章と、IT専門雑誌に寄稿する文章では、目的も素材の選び方も異なることはわかるでしょう。学生全般と専門誌を読む人では、パソコンやITに対する相場感覚が違うからです。

前者ならば、「今、AIがどれだけ注目されているか」というところから話を始めたほうがいい。
後者なら、「技術力を他社と比較できる専門的な話」が中心的になる、といった具合です。

つまり、読者を決めたら、その読者の「相場」を常につかんでおく。
そうすることで、「自分」ではなく「読者」にとっておもしろい素材をピックアップできるようになりるのです。

なお、そうやって集めた素材をどう素早く文章化するか、素材をどう並べることがベストなのか、という点については、私が23年間の中で見出した独自のノウハウを紹介しているので、ぜひ『超スピード文章術』をご覧になって、使い倒してください。