電車内で年長者に席を譲ったものの、頑なに固辞されて気まずい思いをした――。そんな経験があるという人は少なくないのではないだろうか。「せっかく譲ったんだから座ってくれればいいのに」と思わなくもないが、席を譲られる方にも繊細な事情がある。

 シニアマーケットの専門機関、シニアコミュニケーションが行った「『敬老の日』にあわせた60歳以上アンケート」では、「敬老の日」が自分たち向けだと思う65歳以上は1割に満たないという結果が出た。アンケートからは、元気なシニア層の姿が浮かび上がってきた。

 アンケートは、今年8月にウェブ上で行ったもの。同社の会員である60歳以上の男女642人から回答を得た(男性424人、女性218人)。

「年寄り扱い」への微妙な気持ち
席を譲られてショックを受けたシニアも…

 まず、電車内で席を譲られた経験についての回答を見てみよう。60代前半では経験のある人が全体の16.9%。60代後半(31.2%)、70代前半(49.1%)、70代後半(70.2%)、80代前半(80%)と、年齢が上がるにつれて徐々に率が上がるが、全体的にやや少ない印象を感じる。若年層のマナーの悪さと見ることもできるが、次のアンケート結果からはシニアたちの「年寄り扱い」に対する微妙な気持ちが伺える。

「バスや電車のシルバーシートのように、『シルバー向けの座席』をどの程度利用しますか」という問いに、「利用したことはない」と回答した人は、60代前半で55.6%、60代後半で49.1%、70代前半でも32.7%と少なくない。見た目が若いシニアが増えているが、それだけに、自ら進んでシルバーシートに座ることを良しとしない人もいるのかもしれない。

 アンケートには、座席を初めて譲られたときのことについて、「あまりに思いがけないことだったので、返答に困って、次の駅で降りてしまった」「次から電車に乗るときは、(若く見られるように)身なりや背すじを気にするようになった」など、ショックを受けたという回答も寄せられた。譲った席を年配者に固辞されてしまうのは、こんな理由があるからかもしれない。

まだまだ「現役」?
シニアが「敬老の日」に感じる違和感

 シニア層の気持ちの若さをさらに感じさせるのは次の結果だ。「『敬老の日』が自分たち向けの日だと思いますか」という質問に、「そう思う/ややそう思う」と答えた割合は、全体の1割に満たなかった。アンケートの回答数が年代によってばらつきがあり、70代、80代に比べ60代が多いことには注意が必要だが、少なくとも60代では、「『敬老の日』は自分たち向けではない」と考えている人の方が多そうだ。実際に、「気持ちの上で自身が認識している年齢」を聞くと、「1~5歳/6~10歳若い」という回答が大部分を占める結果となった。

 先日、孫のことを「“孫”と言わず、“娘の子ども”と呼ぶ」という男性の話を見聞きしたが、これもシニア層の気持ちの若さを示す例のひとつだろう。高齢化が進む日本において、これからシニアに対しては、単に労るのではなく、適度に「現役」として接するのがベターなのかもしれない。

(プレスラボ 小川たまか)