第5回をむかえる京都本大賞の候補作が発表された。
17歳の女子高生、アリサが現代に降り立った哲学者・ニーチェと出会い、成長していくという異色の小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』が、ノミネートされた。著者の原田まりる氏に、ノミートの感想と京都大賞への想いをきいた。(構成/編集部 撮影/榊智朗)

「神はいたか!」と思いました(笑)

京都本大賞に、『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』がノミネート!原田まりるさんと吉田神社

―― 『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』、京都本大賞ノミネートおめでとうございます。候補作に選ばれたときいて、どう思われましたか?

原田 ありがとうございます。ニーチェは、「神は死んだ」という言葉を残しましたけれど、「神はいたか!」と思いました(笑)。

―― 「京都本大賞とりたい!」と、ずっと話されてましたよね。

原田 京都出身ということもありますし、尊敬する森見登美彦先生も、受賞されていますし(『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞を受賞)。本を出版する時から、とれたら嬉しいなと思っていました。だから、ノミネートされたと聞いて、本当に嬉しかったです。今年初詣は京都にある「梨木神社」という学問と文芸の神様のところにいき「京都本大賞獲らせてくださいませ!」とお参りしてきたのですが、今度お礼参りに行きたいと思います。

―― この本には、京都の風景もたくさん出てきますよね。

原田 そうですね。京都の空気感を感じながら読んでもらいたくて、本の中に出てくる店の地図を本の最後につけたり、有名な場所にいる主人公の挿絵をいれたりして、京都のガイドとしても楽しめるように工夫しました。

 わたしも、京都の情景が浮かぶような本を読んだ時、とっても親しみを感じたりした経験があったので、わたしの本もそうなればいいなと思って、印象的な京都の場所を小説の舞台に選びました。ガイドブックで推されている観光地スポットではなく友達に「今度京都にいくんだけど、どこがおすすめ?」と聞かれておすすめするような場所をもりこんでみました。

―― たしかに、本の中に出てくるお店、不思議で気になるお店多かったです。個人的には、ニーチェが食べたオムレツサンドが気になりました(笑)。

原田 「SIZUYA」さんというパン屋のチェーン店があるんですけれど。そこのオムレツサンドです。京都の人だったら、誰も知っているお店です。
 ふわふわの厚焼きたまごのオムレツサンドと、カリカリに揚がったビーフカツサンドがセットになったものが、オススメです。
 京都といったら和食のイメージですけれど、パンの消費量は全国で1位らしいですね。
 京都の人は、ほんとパン大好きなんです。朝食はおばんざいじゃなくてパンばかり食べていました。

 京都というと薄味というイメージですけれど、どろどろ濃厚スープで有名なラーメンの「天下一品」が生まれたのも京都だし、赤ワインとか牛肉の消費量も京都は多いんですよね。

 この本では、「本音と建前」で言う所の、「本音」がつまったリアルな京都も伝えたいなと思って、書きました。

―― カバーに描かれている神社も印象的ですね。

原田 吉田神社ですね。この本は、吉田神社がある左京区がメインの舞台になっています。わたしがそこの出身というのもあるんですけれど、京都大学とか哲学の道、銀閣寺があったりするエリアです。

 吉田神社は、小さい時から慣れ親しんだ場所というのもあるんですけれど、私の尊敬する森見登美彦先生や万城目学先生の作品の中にも出てくる特別な場所なんです。

 先日、森見登美彦先生のトークイベントを聞きにいったんですけれど、一番好きな京都の祭りはなんですか?という質問に先生は、吉田神社の節分祭とおっしゃってました。
「鬼は外!福は内!」のあの節分のお祭りなんですが、800もの露天が出て、約50万人の人が集まるお祭りなんです。

 あのエリアに住んだことある方だったら、吉田神社って特別な場所というか、パワースポットだとわかるんじゃないかと思います。

―― カバーの絵を描いてもらうために、吉田神社の写真を撮影したんですが、とってもパワースポットという感じがしました。

原田 そうですね。奥の方まで進むと寒気がするようなパワースポットもありましたね。吉田神社には、「お菓子の神様」とかいろんな神様がいるみたいです。

―― なにか、京都のスポット案内みたいなインタビューになってしまいましたが(笑)
 これから10月2日まで投票が行われて、11月1日に大賞が発表されるわけですが、最後に読者の方に向けて、何かメッセージをいただけますでしょうか。

原田 この作品は「一度きりの人生を後悔なく生きるとはどういうことか?」をテーマに、哲学と、京都の独特な雰囲気を掛け合わせて描いた本になります。京都特有の空気感と、人生、哲学者の教えが楽しめる一冊になっていますので現代を生きている多くの方に読んでいただきたいです。投票は京都の書店さんでもネットでも出来ますので、ご投票&応援是非よろしくお願いいたします!

原田まりる(はらだ・まりる)
作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター
1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある