伊藤俊幸・金沢工業大教授

 というのは、核弾頭の開発は順調に進んでいるようですが、ミサイルの方はまだ狙った所に飛ばす技術が確立されていないからです。

 人工衛星などを載せて、ロケットや長距離ミサイルを宇宙空間にまで飛ばす技術は持っているようですが、ミサイルでどこかの都市を狙うとなると、補助エンジンがロケットの方向を調整したりするコントロール技術が必要です。また宇宙空間から大気圏に再突入する際の角度を調整できないと、弾頭部分の角度が深すぎれば燃え尽きたり、逆に角度が浅すぎればはじかれて再突入できずに弾道部分が壊れたりします。

 8月末の発射実験で、北海道上空を通過した「火星12型」の場合も、二段目の弾頭部分の切り離しに失敗して、狙った所に到達しないまま、ばらばらになったようです。北朝鮮自身もどこまで飛んだか確認できていない。変な言い方になりますが、こうしたミサイルの性能を向上させるために、北朝鮮はまだ実験を続けたいと思っていますから、それが結果的に「チキンゲーム」を継続させることになってしまうわけです。

米国は北を攻撃する名分乏しい
「虎の尾」は踏まない北朝鮮

──米国は、北朝鮮の発射実験を黙って見ているのでしょうか。

 北朝鮮のミサイル基地などを空爆するという見方もありますが、「自衛権の発動」という要件がない限り、米国といえどもできません。

 国連で、武力制裁が決議されれば集団安全保障として攻撃ができますが、中国やロシアが反対しますから無理でしょう。コソボ紛争の時は、NATOが国連の決議がないまま空爆をしましたが、あの時は「虐殺行為から守る」という人道的な理由が掲げられたので、国際法上は「違法であるものの正当性がある」ということになりました。

 今年4月に米軍がシリアを空爆したのも、アサド政権が「化学兵器を使用した」という非人道的行為への介入という大義名分です。しかし、北朝鮮が核実験をしたからという理由では攻撃できないでしょう。

 かつて中東戦争の際にはイスラエルが、エジプトが空軍を整備していることを名分に、単独で「予防攻撃」をしたのですが、国際法違反で世界から批判されました。だから、米国はそれもできません。