メモすることで「集中」が可能になる
このテクニックは、ひとりで働いているときにも応用できる。
1つの作業に集中している最中に、ほかのことについてのアイデアがひらめいたら、あとで考えられるようにそれを書き留めておくのだ。
なんらかの作業に取りかかる前に、決められた場所に自分専用の「パーキングロット」を用意しておくのがいいだろう。
それはスマホの「メモ」機能でもいいし、紙のメモ帳でもいい。ただし付箋やレシートの裏側、ダイレクトメールの封筒などに書き留めるのはやめておこう。私自身、こうした手近の紙に走り書きをして、結局、そのゆくえがわからなくなったという経験を何度もしてきた。
アイデアがひらめいたり、なにか重要なことを思いだしたりしても、それが現在の作業と無関係なら、そちらに注意をそらしてはならない。ひとまずそれを書き留め、すぐに本来の作業にもどろう。
あとで思いだせる自信があるなら、メモを残す必要などない?いや、それは通用しない。なぜなら……
メモ帳とちがって、あなたの頭は100パーセント正確に記録を残すことができないからだ。
ちょっと作業の手をとめ、メモをとるだけなら、シングルタスクの集中力が弱まることはない。たとえば、あなたが自然光の下で働いているとしよう。夕方になり、陽が翳りはじめ、室内は暗くなってきた。それでもあなたは断固として座ったまま、「いまはこの作業に集中しているから、ぜったいにライトをつけるような真似はしない」と思うだろうか。それとも、ちょっと立ちあがり、ライトのスイッチを入れ、作業にもどるだろうか。
懸命に目をこらして作業を続けるより、灯りをつけるほうがいいに決まっている。
暗がりのなかでひたすら作業を続けるのが馬鹿げているように、周囲の環境をととのえてスムーズに作業を進められるようにする努力や、頭に浮かんだアイデアをメモに残して本来の作業に専念する努力は「一点集中」のために欠かせない。
とんでもない名案がひらめいたら、それを逃したくないからこそ、私はすぐに紙に書き留める――あとで徹底的に考え、可能性を広げるために。
反対に、書き留めるというただそれだけの行為を怠れば、私はすぐにその名案を忘れてしまうだろう。あるいは、頭の中心にそのアイデアを据えておこうとするだろう。すると結局、本来の作業に集中できなくなる。
一言、二言を書き留めるだけで、頭のなかがすっきりするし、気も散らなくなる。
メモをとらなかったばかりに「アイデアを忘れてしまった」「命じられた仕事をするのを忘れてしまった」「締切りを守れなかった」「提出物をだすのを忘れた」といった体験談を、これまで大勢の人から聞いてきた。
脳はものごとを完全に記憶できるわけではない。人によって記憶力のよしあしがあろうと、そんなものとは関係なく、各自が自分の思考プロセスを管理するシステムをつくらねばならない。
(本原稿はデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』から抜粋・編集して掲載しています)