スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』より、特別に一部を紹介する。

仕事ができない人ほどついやってしまう「カタカナ6文字」の最悪の習慣とは?Photo: Adobe Stock

集中できないビジネスパーソンの「現代病」

 マルチタスクは役に立たない。いや、もう一歩踏み込んで言わせてもらいたい。マルチタスクなどというものは、そもそも存在しない。

 ではなぜ、これほど多くの人たちが「マルチタスク」という現代病に感染しているのだろう? 私たちはいま、この重い現代病に集団感染し、次のような症状を訴えている。

・しなければならないことが多すぎて、時間が足りない。
・生活がゴチャゴチャ、頭のなかもゴチャゴチャ。
・毎日の用事が増えるいっぽう。
・「集中力を奪う邪魔物」が嵐のように押し寄せている。

 このリストは氷山の一角だ。思いあたるふしがあれば、自分でもいくつか症状を挙げてみよう。

マルチタスクと「能率の悪さ」の関係

 自分の症状を挙げおえたら、ある男性の話を参考にしてほしい。日常生活でどんなふうにマルチタスクを試みていますかと尋ねたところ、彼はこう答えた。

マルチタスクが及ぼす悪影響には、おそろしいものがある。運転中にメールを読んでいたら、どうなると思う? 前の車に追突する。電話で同僚と仕事の話をしながら、新聞を読んでいたら? 納期に間にあうはずのない仕事を、『まかせてくれ』と安請け合いしてしまう。奥さんが来週の予定について話しているのに、テレビのフットボール中継を観ていたら? 娘の誕生日に出張の予定をいれてしまうのさ」

 人生という名の途方もなく大きな波が打ち寄せるなか、私たちは必死になって一度に複数のタスクをこなそうとしている。

 その結果、注意散漫な生活に歯止めがきかなくなっている。集中力がなくなり、ストレスがたまり、目の前の作業とはなんの関係もないことでヤキモキする。おまけにそうすることで、いま目の前にいる人たち――同僚、顧客、店員、社員、仲間、家族――に無礼をはたらいているのだ。

 注意散漫の状態を続けていると、なんの成果もあげられないうえ、対人関係まで壊しかねない。

 マルチタスクをこなそうとする試みと能率の悪さには、相関関係がある。これは多くの研究からわかっている厳然たる事実だ。

 本来、「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。成果をあげたい――あるいは少しハードルをあげ、めざましい成果をあげたい――のなら、脇目もふらず、目の前の作業に集中するしかない。

 以前、ある父親が大学を卒業したばかりの息子に向かって、こう諭していたのを耳にしたことがある。「いつだって選択肢は2つだ。1つのことをうまくやるか、2つのことをヘタにやるかだ

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』からの抜粋です)