オーナーシップを捨てれば、「子どもの使い」でしかない

 もちろん、その過程においては、上司や関係部署、同僚の意見には真摯に耳を傾けなければいけません。

 当然のことです。「自分の考えが正解である」などということは、社長であろうが平社員であろうが、原理的にあり得ないこと。さまざまな立場の人々の意見を聞いて、自らの意見を批判的に検証するプロセスは必須です。その結果、自分の意見に修正を加えていくことによってこそ、自らの意見は鍛えられるのです。

 そうして鍛え上げた「自分の意見」を、上司や関係部署に丁寧に伝えて説得していくことによって、組織の意思決定を導いていく。これこそが、オーナーシップをもつ「担当者」の仕事。そして、職位にかかわらず、このような仕事ができる人は、リーダーシップを発揮していると認めることができるのです。

 もちろん、最終的な意思決定をするのは経営陣ですから、「自分の意見」が必ずしも受け入れられるわけではありません。そのときには、その最終決定に添って全力を尽くすのが、組織人としての正しい対応です。しかし、もしも、それでも「自分の意見」が正しいと思うのならば、それはそれとして胸に秘めておけばいい。そして、次にチャンスが巡ってきたときに、その意見を堂々と表明すればいいのです。

 むしろ、「自分の意思」を捨てるほうがよほど恐い。
 なぜなら、上司や関係部署、同僚から相矛盾する意見が出たときに、立往生してしまうからです。あっちを立てればこっちが立たない。そんな板挟みになって身動きが取れなくなるという結果を招くのです。もちろん、担当した仕事は迷走を続け、質の低いものにしかならないでしょう。

 結局のところ、「自分の意思」がなければ、「子どもの使い」にしかならないということ。組織の歯車のなかでギリギリと押しつぶされることを恐れるならば、多少の風当たりはあったとしても、オーナーシップをしっかりと保持したほうがいいのです。

 そもそも、周囲の人に振り回されるだけの人生など、つまらないではないですか。若いころは、オーナーシップを保持するがために、組織内でぶつかり合うようなこともあるかもしれませんが、それもリーダーシップを鍛える重要なプロセス。そんな若者のほうが、将来、大きく成長するものなのです。