らでぃっしゅぼーや社長 緒方大助
らでぃっしゅぼーや社長 緒方大助(撮影:宇佐見利明)

 「安全な食品の宅配事業は無限の可能性を持っている。なんとしてもこの事業に携わりたい」

 今から10年前の1999年。青汁で有名な健康食品メーカー、キューサイの開発部次長(当時)だった緒方大助は、らでぃっしゅぼーやのビジネスモデルに魅了されていた。

 無農薬、有機野菜などの安全で安心な食品を一般家庭に宅配するという仕組みは、その他の食品などにも広げられるだろうし、消費者の支持を得られるのも間違いない。農家と協力してよいものを作るという社会的な役割も評価されるだろう。

 一般にはあまり知られていないが、らでぃっしゅぼーやはそもそも環境保護を掲げる市民運動の一環として始まったもので、団体の活動資金を生み出す役割を担っていた。農家と連帯して安全な食品を消費者に届けるという理念には、ある種のイデオロギー的な側面があったことも否めない。

 ただし、そのビジネスモデルは画期的なものだった。日本初の野菜宅配を始めた87年当時、有機野菜はほとんど手に入らなかった。それを手軽な宅配で買えるというのだから、人気を集めるのは当然のことだった。事業開始から12年目の99年時点で売上高は165億円、会員数5万6000人にまで急拡大した。

 もはや市民団体が独自展開を続けるには手に余る規模になり、らでぃっしゅぼーやは売却されることになった。そこに名乗りを上げた企業の一社がキューサイで、緒方は資産査定部隊の一員として、らでぃっしゅぼーやに乗り込んでいた。