アンケートでは年収も聞いており、全サンプルの平均年収は1087万円で、「特定の公立小学校の学区を視野に入れ、引っ越した経験がある」世帯は1257万円と200万円近く高かった。これも年収とこどもの中学受験進学率の関係と同じ傾向になる。

 アンケートには希望小学校を記入する欄もあり、有名小学校が並んだ。千代田区番町小学校3人、千葉市立打瀬小学校3人、文京区立窪町小学校2人で、この他、さいたま市立常盤中学校、千代田区麹町小、文京区誠之小、豊島区立目白小学校、港区立白金小学校、港区立笄小学校などである。

「学校区」は最も効く不動産広告
捨て看板がなくならない理由

 電柱に貼ってある不動産広告を「捨て看板」という。これは、道路交通法に違反しており違法なので、不動産公正取引協議会などに通報するのが効果的である。しかし、この広告手法がエリア重視で検討している潜在顧客にリーチしやすいがゆえに、あえてやっている不動産会社は絶えない。

 この捨て看板に載っている情報は非常に少ない。その代表例が「○○小学区域内」である。土地の広告であれば、この学区情報以外は土地面積と電話番号くらいしか書いていないこともある。それでも効果があるのは、「その学区に住みたい」という明確な理由があるからだ。不動産のセールストークに「○○小学校学区域内」と謳うのは、実際に効果的なのである。

 捨て看板に限らず、インターネットでの不動産広告でもこの学区情報は真っ先に使われることが多い。指定小学校の学区を最優先で探している人のニーズが非常に強く、物件数が限られるために、成約しやすいという傾向がある。このように、広告として買い手の決め手になっているということは、一定の需要が常にあることの裏返しでもある。

「孟母三遷」は現代にも
人気学区に引っ越す親子は多い

 子どもが接する時間が最も長いのは、親でも塾の先生でもなく学校の友達である。子どもが接する時間が長くなる相手を親が選んであげることは可能だ。それが、小学校の学区域を選んで転居することである。

 その際、選ぶ基準は中学受験率だろう。私が選んだ小学校は子どもの受験率が90%ほどだった。周りの友達はほぼすべて受験をするので、塾に行くし、勉強をするのが当たり前になる。教育水準はこの「当たり前」の水準で決まるのである。こうした選択は、子ども自身はできないので、親が環境を用意することになる。これが「公立小移民」の実態だ。