英国で「リベラル」といえば、かつての自由党、今の保守党左派、マーガレット・サッチャー元首相のようは思想信条の政治家と(ちなみにテリーザ・メイ首相やディビッド・キャメロン前首相は、保守党右派=保守主義である)、トニー・ブレア元首相に代表される「ニューレイバー」、つまり労働党右派のことである。これを日本のリーダー級の政治家に当てはめると、自民党の岸田文雄政調会長、野田聖子総務相、そして民進党右派の前原代表らではないだろうか。

 一方、立憲民主党や共産党、社民党は、英国でいえばジェレミー・コービン党首率いる労働党左派ということになるだろう。これは、どう贔屓目に見てもリベラルとはいえず、「左翼」が正しい表現だ。日本の「自称リベラル派」は、「左翼」ではイメージが悪く、選挙で票にならないので、「リベラル」という呼称を必死に確保しようとしているように見える。

古臭い「保守・革新の対立」という構図
「安保政策を争点化しない」新しい政治の登場

 一部のメディアや識者が「リベラル勢力の結集」とはしゃいでいるのを見ると、いまだに古臭い東西冷戦期の「保守・革新の対立」という構図のまま、物事を考えているようだ。だから保守色の強い小池代表に、自称リベラル派が排除されることに「感情的」な反発をしてしまい、現在日本政治に起こっている現象の意義を、冷静に評価することができないのだろう。

 小池代表・前原代表が起こしたことは、古臭い「保革対立」を超えた、「新しい政治勢力」の誕生という「政界の創造的破壊」だ。それは、「安全保障政策を争点にしない」という、欧米の自由民主主義国では当たり前の政治を実現したことである。

 例えば、英国では野党は国内のさまざまな政策課題で激しく政府・与党を批判していても、政府・与党が海外への軍隊の派遣を決定する時は、「首相の偉大なる決断」を称賛する演説を行うものだ。このように、欧米民主主義諸国では、野党は安全保障政策では対立を挑まないし、たとえ政権交代となっても、政策の継続性を重視する。国民の生命と安全がかかっている最重要政策を政争の具にはしないということだ。

 もちろん、欧米の議会でも安全保障政策を巡る議論が行われないわけではない。しかし、日本の、2015年の安全保障法制を巡る与野党の激突のような、とにかく法案を潰すためにありとあらゆる方向から反対するようなことはあり得ない(2015.9.19付)。強固な安全保障体制を確立し、抑止力を強化するためにはどうすればいいかという観点で、建設的な議論が行われるのだ。

 小池代表と前原代表は、故意犯的に「安全保障政策を政争化しない政治」を実現しようとしたと考えられる。前原代表は、立憲民主党が立ち上がった時、「想定の範囲内だ」とコメントしているからだ。最初から小池代表の蛮勇を使って、自ら手を汚さず「自称リベラル派」を追い出すつもりだったのだろう(2017.8.29付)。