「本郷も かねやすまでは 江戸の内」

 江戸屈指の小間物屋といわれた「かねやす」は、今も本郷3丁目の交差点角に店を構える。

 享保の大火の後、時の町奉行だった大岡越前守は、本郷から江戸城にかけての建物を、耐火性に優れた塗屋・土蔵造り、瓦ぶきにするよう命じる。ちょうどこの境目にあったのが「かねやす」。その南と北で、街並みは一変したという。有名なこの古川柳、実は江戸の防災対策を詠んだものだったのだ。

大岡越前守の治安対策を受け継ぐ文京区?
23区中ではピカイチとなる「防犯の優等生」

 町奉行は、都知事と警視総監を兼ねたような仕事。防災と並び、街の治安に頭を悩ませたことは、江戸も東京も変わりがない。現在でも、盛り場を抱える新宿区、台東区、豊島区などでは、犯罪対策が区の重要課題となっている。これらの各区に囲まれた位置にありながら、文京区は東京一の防犯優等生である。

 文京区の犯罪発生件数(刑法犯認知件数)は、23区中最少。犯罪発生数が2番目に少ない目黒区と比べて約4分の3程度と、ピカイチの低さだ。

 昼間人口当たりの犯罪発生数は、千代田、中央の両区に次いで21位。夜間人口当たりになると、これら両区は途端に数が多くなるが、文京区は夜間人口当たりの犯罪発生数も目黒区に次いで少ない。昼間人口当たり、夜間人口当たりが共に少ない方からベスト3に入っているのは、文京区だけである。

 ところで、東京は犯罪が多いのか、少ないのか。昨今データが出揃った2010年の数値で、昼間人口1万人当たりの犯罪発生件数を調べてみよう。