突然、見知らぬ人から「ご無沙汰しています」
新しい技術が発明されると世の中が便利になる一方、必ず反発が起こる。だが、その技術が社会に浸透し、人々が慣れてくるにつれてその反発は収まっていくものだ。
しかし、どうしても慣れないものがある。いつまで経っても、違和感を拭い去ることができない。筆者にとって、携帯電話の「ハンズフリー通話」がその代表例だ。
専用のイヤホンやマイクを利用して、携帯電話を顔に近づけることなく使用できるハンズフリー。手が疲れない、両手が自由に使えるなど、便利な点も多いが、周りの人からしてみると、電話をしているのか、独り言を発しているのかわかりにくいという問題点がある。
先日、コンビニのレジに並んでいたところ、後ろにいたビジネスマン風の男性が唐突に、「ご無沙汰しております」と話しかけてきた。驚いて後ろを振り向くと、なにかが変である。男性の視線が合っていないのだ。著者の方ではなく、ぼんやりと斜め上に視線を向けている。いぶかしがる著者をよそに、男性は大きな身振り手振りでなにかを必死に話し続ける。時々お辞儀のような動作もしている。そして最後にもう一度深々とお辞儀をすると、素知らぬ顔をして元の静かな状態に戻っていった。
こんなこともあった。