バブル経済の崩壊に先立って、1989年から長時間労働が減少に転じたのは、1988年に残業代の割り増しが不要の法定労働時間を、週48時間から40時間へ短縮する労働基準法の改正が行われた影響である。その後、激変緩和措置が逐次取り払われて全ての企業に普及していったため、景気後退の後押しもあって1994年に10.4%にまで大きく低下した。

 その後、景気の回復で上昇傾向をたどったが、2003年を境に低下に転じ、2007年以降は景気変動にはあまり影響されずに過去最低を更新し続けており(リーマンショック後の2009年は例外)、2016年には7.6%にまで減っている。

 経済情勢による変動を取り除いた長期傾向としては、明らかに長時間労働は減少していることが分かる。

労働時間に対し
敏感になってきた日本人

 就業構造基本調査の方も、ほぼ労働力調査とパラレルな動きとなっている。労働力調査は月末1週間の実際の労働時間を翌月の始めに聞いており、就業構造基本調査は、時期を特定せず、普段の労働時間の状態を聞いている。したがって、就業構造基本調査の方が主観によって左右されるといえる。

 就業構造基本調査と労働力調査の結果を比較すると、以前は労働力調査の値よりもかなり低かったのに、2007〜2012年には、傾向的に同等かそれ以上の水準へと変化した。60時間以上という健康を害する可能性のあるような水準の長時間労働については、近年、長期間労働が過労死の要因として問題視されるようになって、回答者も「普段の状況」について実態に近い判断をするようになったと考えられる。

 すなわち、長時間労働が増えていると人々が感じる理由は、実際に長時間労働が増えているからというより、「労働者が以前よりも自分の労働実態を正しく認識するようになった」からである。

 近年、パートタイマーなどの非正規雇用が著しく増加しており、長時間労働の比率が低下したのは母数に含まれる短時間労働者が増えているからに過ぎず、フルタイム労働者の長時間労働は増えているのではないか、といった疑問も生じる可能性がある。そこで、図2では労働力調査によってフルタイム労働者に占める長時間労働の推移を確かめた。