中途失明要因の一つ、加齢黄斑変性(AMD)がじわじわ増えている。網膜の中心部にある「黄斑」組織に異常が生じる病気で、AMDを発症すると視野の中央がゆがむ、モノが小さく暗く見えるなどの症状が出てくる。徐々に組織が萎縮する「ドライ」タイプと、病的な血管が増殖し(血管新生)滲み出した血液で黄斑組織が損なわれる「ウエット」タイプがあり、後者は進行がかなり早い。
ただ近年、ウエットタイプの治療法は格段に進化した。以前の侵襲的治療に代わり標準治療になったのは、がんの分子標的薬から派生した血管新生阻害薬。病的な血管の増殖を阻止する眼内注射薬で、日本では2008年に「ペガプタニブ(販売名マクジェン)」が、09年に「ラニビズマブ(販売名ルセンティス)」が承認された。
特にラニビズマブは視機能改善効果があり、最初に使われることが多い。ただし、根治療法ではないので初期の3ヵ月は毎月1回、その後も定期的な注射が必要だ。視力を失わない手間は惜しまないが、問題は薬価が約18万円と高いこと(3割負担で5万円超)。このあたりは海外でも同じで、米国ではAMD未承認だが1回のコストが40分の1の約50ドルですむ「ベバシズマブ」が“影の第1選択薬”になっていた(日本でも未承認)。そもそも、ラニビズマブはベバシズマブをAMD用に改良した薬剤で、承認を待つ間に「元祖」の使用が広まったらしい。