バイエルン・ミュンヘンとアドバイザリー契約を結ぶ
2000年、私は新しい社長としてセレッソを引っ張っていく立場となった。そして同年、ドイツのサッカークラブ、バイエルン・ミュンヘンにクラブ運営のノウハウを全面的に学ぶプロジェクトを開始した。
バイエルン・ミュンヘンとの縁は、日本ハムが取り持ってくれた。当時のGM、ウリ・ヘーネス(現・会長)は、実家がハムの会社を経営している関係で、日本ハムとつながりがあった。こうしてバイエルン・ミュンヘンとセレッソ大阪は「アドバイザリー契約」、つまり経営や強化のノウハウを学ばせてもらう関係を結んだ。
ここでは「地域密着」のありかたについても、多くを学んだ。本来、チームの経営は地域に愛されることによって初めて成り立つ。プロスポーツクラブの収入源は、
①観客動員数
②放映権
③マーチャンダイジング(商品制作)
④スポンサーからの出資
という四本柱によって成り立っている。観客動員数のアップには当然地域の支えが不可欠だし、放映権も地域の方々に喜んで視聴してもらうことによって継続できる。地域の力があってこそ収益が上がるのだ。しかし当時の日本のスポーツ業界は、「地域密着」という考え方が根付きにくい土壌を持っていた。
四つの収益の柱のうち、④に支えられる部分があまりに大きすぎた。
この根強い風潮を打破するにはどうするか。それにはとりもなおさず、「愛されること」が必須だった。そのために必要なのが、ファンとの親密な関係づくり――すなわち「ファンサービスの徹底化」だった。
バイエルン・ミュンヘンにおけるファンサービスのありかたは、まさにこの考えにのっとったものだった。監督や選手の間に、ファンサービスの意識が浸透していた。「ファンあっての自分たちである」ということをすべての選手が理解していた。スタジアム内には「サイン専用の部屋」が設けられていた。選手たちは「一日につき最低●個のボールにサインすること」「年間最低■枚の選手カードにサインすること」などの規則もあった。
バイエルン・ミュンヘンからは本当に多くのことを学ばせてもらった。セレッソで行ったファンサービスについては次回に場を譲るが、ファンサービスだけでなく、あらゆる面で参考になった。実は、セレッソの後に社長を務めることになる北海道日本ハムファイターズでの選手獲得・評価システムの確立にも多大な影響を受けているのだが、それはまだ先の話である。
(本連載は、藤井純一著『日本一のチームをつくる』から抜粋、改稿したものです。)
新刊書籍のご案内『日本一のチームをつくる』
プロ野球とJリーグの両方で社長を務めるという稀有な経験の持ち主、藤井純一。セレッソ大阪、そして北海道日本ハムファイターズで人気低迷から来る大幅な赤字を「地域密着」というコンセプトで黒字転換させた彼は、いかにして地域密着を成し遂げたのか? スポーツで街を元気にする、経験に裏打ちされた成功哲学。
ご購入はこちら!→ [Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]