大連の書店。趣味関係の本も充実している

「中国はスマホで何でも情報が入手できる便利な世の中になったといっても、スマホで調べものをするのと、書店で目につくものは別。スマホだと自分の興味のある情報しか入ってこないけれど、書店に行けば、アトランダムにさまざまな情報が目に飛び込んでくるし、思わぬ掘り出し物もある。日本の書店と違い、中国の書店は、床に座って本を吟味している人も多いし、カフェ代わりに使う人も多いですね。ITが一足飛びに進化したからこそ、こういう場所も大事なんだと思えるようになった人が、書店に出掛けているのかもしれません」

中国で流行りつつある
シンプルで文化的な生活

 1日中スマホと睨めっこし、スマホ中毒になっている人が多いとばかり思っていたが、スマホによって知識や情報量が格段に増え、一挙に洗練された人々が、逆にアナログであるカフェや書店に向かっているとしたら、まさにITの進化がもたらしたアナログの素晴らしさだといえるだろう。

 そういえば、上海で中国の富裕層向けに日本旅行の専門誌「行楽」(こうらく)を発行する行楽ジャパン社長の袁静氏に取材していたとき、彼女がこんな話をしてくれたのが印象的だった。

『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社) 、中島恵著、定価850円(税別)

 同社は今年「体験有温度的日本」(ぬくもりのある日本を体験する)をキャッチフレーズに、中国や日本の地方都市で「読者会」を開催しているが、その際、募集はウィーチャットで行いつつも、少人数で行っている。

 袁氏は「スマホによるオンラインの情報が増えれば増えるほど、誰かと会ってじっくり話すことの重要性や、人のぬくもり、接点を求める人が中国でも少しずつ増えてきているように感じます」と話していた。オンラインで情報を得て、リアルに接点を持ち、またオンラインでも連絡を取り合うという、時代の変化に合わせたスタイルになってきている。

 日本では必要最小限のものだけで暮らす「ミニマリズム」が流行しているが、中国でも「小清新」(シンプルで文化的な生活)が流行しつつある。 

中国のIT社会は日進月歩で進化を遂げているが、そういう変化の激しい社会でも、こうした人間味あふれる原点回帰の傾向が少しずつ現れてきたり、リアル店舗が努力している点に、私は少しホッとした。