旅行・ホテル業界にまた新たな“黒船”が現れた。世界最大のホテルチェーン、スターウッドホテル&リゾート ワールドワイドがMICEビジネス強化策を打ち出したのだ。

 MICEとはMeeting,Incentive,Convention,Exbitionの頭文字を取った略語で、国際会議、優秀な営業パーソンや代理店などを表彰するインセンティブ、研修旅行や展示会などを組み合わせたものだ。これまでスターウッドは、旅行会社を通じて場所の提供を行なってきたが、専用の予約サイトを立ち上げ、旅行会社を通さない直接取引にも乗り出すのだという。

 スターウッドはシェラトンなど海外に1000を超えるグループホテルを持つ。こうした海外のホテルに端末を置き、ウェスティンホテル東京など日本のグループホテルの宴会場の空き状況や見積もりを閲覧したり、予約もできるようにするという。

 つまり、海外の法人顧客にとっては、ワンストップで日本国内でのMICE関連の予約ができることになる。スターウッドは日本国内の15ホテルに、問い合わせや予約などをフォローする専門のMICEスタッフを置く方針を明らかにしている。

 すでにシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで日本国内の企業(外資系を含む)の説明会を行なったり、中国や東南アジア企業のMICE担当者を日本に招待するなど“攻め”の姿勢に転じている。同時に、宴会施設とホテルをセットにして最大3割引にしたり、ポイントを優遇するなどの“お得感”も前面に出している。

 震災ではスターウッドグループの国内ホテルにも大きな影響が及んだ。MICE関連で11万7000泊がキャンセルとなっており、売上げの2割をMICEで稼ぐ同グループにとって大打撃となったのだ。さらには、原発問題の長期化と円高、世界的景気の低迷が追い打ちをかけ、「7月、8月から回復が見えてきた」(ミゲル・コウ・アジア太平洋地区会長兼社長)ものの、本格回復にはいたっていない。

 それでも、今この時期にMICE関連への体制を強化するのは理由がある。MICEは、他のイベントに比べると比較的堅調で、継続して開催される可能性が高いため需要が本格回復してきた暁には、安定した収益を確保することができると見ているからだ。

 円高でかつ原発問題も収束しないなか、日本でわざわざMICEを行なう企業は少ないと考えていることも、逆にスターウッドにとっては先行者利益獲得のチャンスと映ったようだ。「実際に日本に来てみれば、これほど安全で品質の高いサービスが受けられる国は他にはない。お客(法人顧客)は新しいディスティネーション(行き先)を求めており、日本を売り込むチャンス」とコウ会長は見る。

 スターウッドの本格参入で、パイの奪い合いが激しくなれば、国内ホテルには価格引き下げ圧力にもなる。特に、業界内では、「都内では、ホテルオークラやホテルニューオータニに脅威になる」との見方もある。世界的に見ても日本はMICEビジネスでシンガポールに大きく遅れを取ってきたため、外資勢に比べると経験が劣る。

 ただでさえ、経営が厳しい国内勢にとっては、また頭痛のタネとなりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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