だが、健康保険や厚生年金保険という2つの社会保険料の負担が始まると、いわゆる「手取りの逆転現象」が起こり始める。その原因となっているのが、サラリーマンの社会保険の「被扶養者」の制度だ。

 国民皆保険・皆年金の日本では、誰もがなんらかの健康保険と年金保険に加入することが義務づけられている。

 通常は収入に応じた保険料を自分で負担するが、会社員や公務員などサラリーマンに扶養されている妻は、原則的に年収が130万円未満(60歳以上、または障がい者は年収180万円未満)までは、保険料の負担なしで健康保険や国民年金保険に加入できる。

 だが、パート収入が130万円以上になると、夫の扶養から外れて、妻は自分でこの2つの社会保険料を支払うことになる。

 たとえば、社会保険料の壁を超えて、年収が132万円(月収11万円)になった場合、2つの社会保険料は年間約26万円(2017年度。健康保険は東京都の協会けんぽ、40歳以上で介護保険も負担しているケース)。このほか、雇用保険料や税金の負担もあるため、手取りは105万円程度になる。

 一方、年収129万円に抑えると、2つの社会保険料の負担がないので、手取りは125万円程度。頑張ってたくさん働いた人よりも、就業調整した人のほうが、約20万円も手取りが高くなるという逆転現象が起こってしまうのだ。

 従業員501人以上の企業で働くパート主婦の場合、社会保険料の壁はさらに下がっており、2016年10月から年収106万円(月収8万8000円)以上になると2つの社会保険が適用されるようになっている。

 配偶者控除・配偶者特別控除を見直して、妻の収入が150万円になるまで夫の税金を優遇しても、その割引分では妻の社会保険料の負担をカバーするには程遠い。

 結局のところ、来年以降も「パート収入の壁」は130万円(または106万円)のままで、がんばってたくさん働くより、就業調整したほうが手取りが増える構図は相変わらずだ。国の思惑に反して、来年以降も年末に就業調整する主婦たちは後を絶たないのではないだろうか。