マネジメントの理論と実務の根底にあった仮定がどんどん時代遅れになり、役に立たないものになりつつある。それはまた、その前提にあった現実が変化していることによる。ドラッカーは1969年に発表された本稿でそう指摘した。ドラッカーは古くなりつつある仮定を5つ挙げ、またそれに対応するかたちで新しい仮定を5つ挙げている。そこには知識社会の到来、グローバル化への予感、イノベーションと変化の重要性など、現在にも通じるテーマが語られている。
現実の変化がマネジメントも変える
過去半世紀におけるマネジメントに関する理論と実践を振り返ってみると、その前提となっていた仮定の数々が時代と不整合を起こし始めていることに気づくだろう。
これらのなかには、すでにその妥当性に疑問符がつけられ、時代遅れになってしまったものもある。また、依然用いられているものでも、もはや適当とはいえないものがある。マネジメントの世界において、一義的かつ本質的、しかも支配的な機能や現実とは言いがたく、いまや二義的であり、副次的、例外的なものになっているのだ。
マネジメントの神髄と認識されてきたものが陳腐化し、現実と乖離し始めたのは、マネジメントが成功した結果でもある。実際この半世紀、マネジメントは科学以上に優れた成功を収めている。
またより大局的に見れば、とりわけ先進国における社会や経済、そして現在の世界観はマネジメントと部分的に関係しながらも、独自の発展を遂げることで、従来の仮定を陳腐化させている。つまり、経営者の基本的な役割をめぐる客観的な現実が、急速に変貌しているのだ。
いかなる経営者も、マネジメントの新たな概念やツール、新たな組織概念、情報革命といったものに高い意識を持っている。その意味からも、マネジメントに訪れつつある変化は重要であるだろう。
ただしより重要なのは、前提条件の変化であり、マネジメントの理論や実践の根底にある仮定への影響である。マネジメントの概念やツールの変化が、経営者に行動改革を迫る。概念やツールが変われば、経営者の業務やその遂行方法が変わるからだ。
現実が変化すれば、経営者の役割そのものに改革が求められる。その基本的な役割が変化するということは、経営者の存在理由も変化することを意味する。
本稿では、実務家であろうと理論家であろうと、マネジメントに関わる人々が、当然のことと考えている従来の仮定についてまず手短に説明する。そして、今日のマネジメントの現実に適応する、従来とは違った仮定を打ち立てる。