アルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄を走っていた頃の500形 Photo:Tokyo Metro

 ただ、1980年代には300形の導入から30年が経過。300形ベースの旧型電車も老朽化が目立つようになってきた。銀色アルミ車体の新型電車「02系」が1988年に登場すると、300形や500形などの旧型電車は順次廃車。1996年までに全て引退してしまった。

 最後まで残った131両は、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスの地下鉄運営会社に売却。赤白2色とサインウェーブの電車が、今もブエノスアイレスの地下を走り回る。しかし、売却した時点でも老朽化していた車両だ。近年は故障によるトラブルも増えている。2013年にはスペイン・マドリード地下鉄で使われていた中古電車が導入され、それに伴い300形や500形の廃車が始まった。

 そうした中で、500形「里帰り」の話が浮上した。

アルゼンチンから「里帰り」
きっかけは銀座線の新型導入

500形“里帰り”のきっかけは幻に終わった銀座線01系の譲渡話だった Photo by Y.K.

 東京メトロの留岡正男常務取締役(車両担当)によると、今から3年くらい前のこと。「アルゼンチンの方」が東京メトロを訪ねて「01系を持って行きたいんだけど、どうか?」と話を持ちかけてきた。

「01系」とは1983年にデビューした銀座線の電車。東京メトロは新型の1000系電車を銀座線に導入し、老朽化した01系の廃車計画を進めていた。ブエノスアイレス地下鉄は01系を譲り受け、これより古い300形や500形を置き換えたいという考えがあったのだろう。東京メトロは「(300形や500形を)廃車するときには戻してください」と応じたという。

デビュー時仕様の584号(上)と引退時仕様の734号(下)。窓の大きさなどが異なる Photo by Y.K.

 01系の譲渡は結局実現しなかったが、「戻し」の方は話が進んだ。東京メトロは2015年、「鉄道技術発展に貢献した車両」として500形を買い戻し、修繕して動かせる状態で保存(動態保存)する方針を決定。翌2016年7月には、廃車になった4両が船に載せられて横浜港の大黒ふ頭に到着し、丸ノ内線の中野車両基地(東京都中野区)に搬入された。こうして同年9月、動態保存のプロジェクトチームが発足。修繕作業がスタートした。

771号は「アルゼンチン仕様」。先頭部の行先表示(上)や車内の路線案内(下)はスペイン語だ Photo by Y.K

 4両各車の番号は584号・734号・752号・771号。いずれも走行用のモーターを搭載しており、片側に運転台が設けられている。このうち1両(752号)を予備車とし、残る3両で1本の編成を組んで動態保存するものとした。

500形は丸ノ内線時代の1970年代に改修工事が行われて内外装が変わっており、ブエノスアイレス地下鉄に移ってからも一部が改造されている。そこで584号はデビュー時(改修前)、734号は引退時(改修後)の姿で復元。771号は「アルゼンチン仕様」とし、行先表示器や車内の壁にはスペイン語の案内表示を残した。500形がたどってきた歴史を一度に見られるというわけだ。