視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
日本人とフランス人の子ども、どちらが「深く考える」か?
以前、こんな話を聞いたことがある。
今はどうなっているか定かではないが、その話の当時、フランスの鉄道の列車内には、乗客がドアを開閉できるボタンがあった。そのボタンは停車中だけでなく、走行中にも動作した。
ある日本人のフランス駐在員の奥さんがこの事実を知り「これは危険だ」と感じた。そして現地の新聞に「走行中に子どもが勝手にドアを開けて落ちたら大変だ。すぐに改善を求める」という内容の投書をした。
するとそれに対し、新聞の他の読者から意見が寄せられた。「フランスにはそんなバカな子どもはいない」というものだった。
聞いたのはここまでなのだが、とても示唆に富む話だ。
きっとフランス人は自分の子どもに、走行中に扉が開く危険をきちんと考えさせるのだろう。そして、ボタンを押したら危ない目に遭うことを、自分自身で理解させようとするに違いない。
一方、日本人はそもそも安全な仕組みにしておく。そうすれば気をつけなくても事故の危険性は少なくなり、安心だ。だが半面、日本の子どもは走行中の電車の扉が開く危険について「深く考える」機会を失うことになる。
さて、どちらの国の子どもの方が頭のいい大人に育つだろうか。