相手にとってアンフェアな交渉に
「共感」は欠かせない

 急に自分の都合を押し付けられれば、相手は態度を硬化しがちです。ましてや、フェアな内容でないとなれば、信用が大きく損なわれてしまうリスクがあります。

 連載の中でプレゼンテーションをテーマにした時にも紹介したのですが、人を動かすためには「共感」が不可欠です。自分の都合を押し付けることは、共感をきわめて得にくい行為であるといえます。

 条件がフェアであれば、交渉事は比較的やりやすい面もあると思うのですが、そうでない場合には、相手の共感を得ないことにはまずうまくいく見込みはありません。そのためには、相手の心理状態や置かれている状況、交渉後にその人のみに起きるであろう事象について考えを巡らせる必要があります。

 友人Bは私が板を欲しているかどうかの確認を一度もすることなく、自分の都合を押し付けてきました。ここで「澤もこの板ほしい?」と一言聞いた後で会話を進めていれば、受ける印象はずいぶん違ったものになります。

「あー、澤も欲しいんだ。自分もすごく欲しいんだけど、どういう条件ならOKかな?」とくれば、さすがに私も友人相手にごり押しするような条件を提示はしにくくなります。

 また、値上げを要求してきた営業パーソンも「今のサービスにご満足いただけていますか?」という質問から入ってもらえれば、対応する時のマインドが変わります。そして、「実は今の契約金額では、これ以上のサービス向上が難しくて…」という感じで続いてくれば、「どうやったらお互いにとってプラスになる契約を作ることができるか」と考えやすくなります。

 いずれにせよ、「自分はこうしたいからあなたは黙って受け入れるべきである」という姿勢で臨めば、成功する交渉もうまくいかなくなるものです。

 ちょっとした交渉事も、まずは質問から入る習慣づけが必要です。質問は、相手に対して興味を持っていることを示す分かりやすいアクションです。自分に興味を持ってくれていることが感じられれば、人は心を開きやすくなります。

 どうしても相手には不利な条件を提示しなくてはならない交渉の場面においても、質問を重ねることで落としどころを探ることができます。質問をせずに交渉の中心となるトピックを出してしまうのは、着地点の状態が全く分からない状態でパラシュート降下するようなものです。そもそも地面ですらなく、ワニがウヨウヨいる沼かもしれませんし、絶対に抜けられない密林のど真ん中かもしれません。

 ましてや、グローバル仕事人たるもの、相手は価値観の全く違う日本人以外であることだってあり得ます。そんなときこそ、質問の精度を上げることが、皆さんの交渉をうまく運ぶためのきっかけになることでしょう。

 まずは自分の交渉事の落としどころが、自分が無事に着地できる場所なのかどうかを、質問によって探る癖を付けてみてください。

(プレゼンテーション・アドバイザー 澤円)