弱い立場でも負けない!ビジネスパーソンなら知っておくべき「交渉」のテクニックを解説します。交渉を初めて学ぶ人、世界標準の定番スキルを学び直ししたい人に特におすすめ。交渉のキモが2分でわかる!

オバマ大統領の広島訪問はなぜ実現したか

 交渉で難しいことの一つに、暗礁に乗り上げてしまった案件をどう動かすかというのがあります。

 ●こちらの提示する条件に対し、先方が応諾する気配がまったくない
 ●こちらも妥結に向けて少しでも進展させたい希望はあるものの、重要な条件において譲ることができない

 このような状況で、なすすべなく放置されている……そんな案件はどうしたらよいのでしょうか。

先日のオバマ大統領の広島訪問は、このような「長年膠着していた問題」が大きく前進したというケースでした。

 アメリカの現職大統領が被爆地である広島を訪問するのは初めてのこと(退任後を含めても1984年のカーター元大統領の一度きり)。
 戦後、大統領の訪日は何十回とあったわけですが、被爆地への訪問はこれまでタブー視されてきたのでした。
 それが近年、ルース駐日大使(当時)、ケリー国務長官と現職政府要人の訪問が実現し、今回ついに大統領の訪問へいたったのです。

 このケースは複雑な国際政治の問題で、ビジネスにおける交渉と単純に比較できるものではありませんが、それでも、学ぶべき重要な点があります。

 それは、交渉では「キーパーソンは誰か」がきわめて重要だということです。

誰を相手に“交渉”すべきか
見極めることで状況は変わる

 今回の件では、就任前から核兵器削減に強い関心を持っており、就任後も核廃絶に向けた取組みでノーベル平和賞を受賞というオバマ氏の個性・信条と、そんな人がアメリカ大統領という地位にいたことが、従来とは異なる大きな要素だったと考えられます。

 交渉事一般においても、相手組織を動かすカギとなる人物(キーパーソン)は誰(どの役職)かを見極め、その人を説得できないか作戦を立てていくのが定石です。
 加えて、現時点でのキーパーソンの説得が難しそうな場合、相手組織の中で自分側の要望と比較的近い人物を探し、その人がキーパーソンになるよう仕向けられるか、という視点も重要になります。

 そして、キーパーソンが特定できたとしても、その人に直接働きかけることが得策か、つまり、交渉当事者として適切な人(ライトパーソン)は誰か、は別に考える必要があります。
 「将を射んと欲すればまず馬を射よ」というように、キーパーソン以外の別の人に当たった方が、キーパーソンを動かしやすいという状況もあり得るからです。

 こうした相手組織内の関係者とその力関係を整理するには、交渉の準備段階でマッピングをしてみることをおすすめします。
 交渉の直接当事者だけでなく、すべての利害関係者を幅広く洗い出すのです。

『ブロービスMBAで教えている交渉術の基本』(グロービス著 ダイヤモンド社)より。
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 拙著『グロービスMBAで教えている交渉術の基本――7つのストーリーで学ぶ世界標準のスキル』では、社内のプロジェクトチームに貴重な人員を引き抜かれそうになったリーダーが、キーパーソンは誰か、真に交渉すべき相手は誰かを見つけるまでのストーリーを通して、関係者の整理の仕方を解説しています。

 なお、上の図は相手組織のマッピングの例ですが、キーパーソン、ライトパーソンの見極めは、相手方だけでなく自分の組織においても行う必要があります。

 成り行きで交渉当事者になった人が、交渉の成立にとってベストな人とは限りません。
 交渉をめぐる状況を客観的に捉え、誰ならば交渉を動かせるか、交渉を動かせそうな人がキーパーソンになるよう、どのように仕向けるかといった発想も重要なのです。