大ヒットマンガやドラマが後押しした
非行少年とスポーツの結びつき

 中澤氏も、過度な部活の負担が、教師の労働問題を悪化させるひとつの原因になっていると指摘する。

「部活の指導手当については、土日に出ても数千円程度と、最低賃金を下回っている学校も多い。また、日本の公立中学校の教師は約6割が、残業月80時間の過労死ライン越えとなっています。しかも、部活はあくまで“自主的な課外活動”とされているので、もし部活の影響で病気や死にいたった場合でも、労災がおりるかどうかはあいまいで、はっきりしません」(中澤氏、以下同)

 すべての教師が好んで部活指導をしているとは限らない。特に若手の教師だと、半強制的に顧問にならざるを得ないこともあるという。望まぬハードスケジュールで心身に異常をきたしても、「自主的にやったこと」と見なされるのは理不尽な話である。

 教師も生徒も疲弊しているのに、なぜブラック部活はなくならないのか。日本でここまで部活が肥大化した一因として、部活がスポーツであるのと同時に「教育の一環」という認識が広まっているからだと中澤氏は説明する。

「実は、戦前は部活に入っている生徒のほうが少数派でした。しかし戦後は、徐々に部活に加入する生徒が増えていき、1980年代になると非行生徒とスポーツが結びつくようになります。校内暴力が問題化していた80年代、普通の生徒指導では手に負えない生徒も部活を通してなら指導・管理できるのではないか、と考えられたのです。実際に当時の体育専門雑誌には『部活で非行生徒を更生』などのスローガンが掲載されていました」

 80年代以降になると、ドラマや漫画などのコンテンツでも、不良生徒が部活を通して活躍していくストーリーがヒットし、メディアも感動を煽った。漫画の『SLAM DUNK』(90年連載開始)や『ROOKIES』(98年連載開始)、TBSテレビドラマ『スクール☆ウォーズ』(84年)などの大ヒット作がそれである。

 こうしたメディアの戦略もあり、スポーツを通して人間指導をしていく、という認識が一般的にも広まっていったと中澤氏は説明する。そして、この時期に部活は、生徒の「根性」を鍛える管理主義的な傾向を強めていったのだという。