08年秋のリーマンショック、そして昨年から深刻化の度合いを深めるユーロ危機の中にあっても、邦銀は相対的に健全性を保っているように見える。しかし、果たして邦銀の経営は磐石と言えるのだろうか。そして、ユーロ危機に直面する世界の中で、邦銀には何が出来るのだろうか。
本稿では、まずユーロ危機の本質を簡単に俯瞰し、それが金融規制の厳格化と相まって深刻化する世界の金融機関の経営、その中で邦銀がどう対応すべきかを考える。
ユーロ危機の本質は
経常収支の域内不均衡
ユーロ制度は、91年末に締結されたマーストリヒト条約に基づいている。金融政策は、各国政府から独立したECB(欧州中央銀行)が担い、財政政策は97年に締結された「安定・成長協定」に従い、各国政府が担う。
「安定・成長協定」には、ある国の財政赤字がGDP比で3%を恒常的に越えないことを定めており、それを越えた国に対する罰金規定もあるのだが、実際には適用されていない。すなわち、各国にかなりの裁量が与えられた緩やかな制度だと言うこともできる。その結果、リーマンショック後には南欧諸国(スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ)を中心に財政収支が悪化した。
さらに、99年にユーロが導入されてからの一貫した傾向として、物価が高く人件費も上がって競争力を失っていった南欧諸国に対し、東欧諸国への進出などをテコに人件費を抑制し、競争力を増したドイツやオランダなどとの間で経常収支に不均衡が生じていた。通常であれば、経常収支の不均衡は、為替レートの変動によって調整されるのだが、ユーロという単一通貨があるため、そのメカニズムは働かなかった。
それどころか、南欧諸国など経常収支赤字国が、それをファイナンスするための国債は、ユーロ圏の他国から見れば為替リスクを負わずに高スプレッドを得られる投資であった。このため、多くの資金が流入したことによって、南欧諸国はむしろ資産バブルに沸いていたのである。